iPhone16の全モデル、および対応するiPhone・Mac・iPadで利用できる「Apple Intelligence」(外部リンク)は、Appleが手掛けるAI(人工知能)です。2024年9月に発表され、2025年には待望の日本語対応を果たしました。

今回の特集はApple Intelligenceについてです。基本的な性能をおさらいしつつ、同じ人工知能のChatGPT・Gemini・Grokにインタビューを行い、Apple Intelligenceの印象について語ってもらっています。どうぞ最後までお楽しみください。

AppleのAI「Apple Intelligence」の主機能紹介とChatGPT・Gemini・Grokの感想

Apple Intelligenceの主機能

Apple Intelligenceの主機能は、「Language (言葉)」「Images (画像)」「Action (実行)」の3つに要約されます。AIがユーザーを補助する形でこれらの機能を発揮し、従来のデバイスとは異なる体験を生み出す点が魅力です。

「Language (言葉)」：AIライティングツール

Apple Intelligenceでは、メール・メモ・Pagesなどのアプリで、テキストのリライト・校正・要約を行えるツールが提供され、文章作成の明確さと効率が向上します。ビジネスメールを校正し、バリエーションも提示する機能は非常に便利です。

メモアプリと電話アプリで音声の録音・書き起こし・要約ができるようになった点もポイントで、この機能はインタビューを行う人間にとって重宝します。ライティング関連全般が、Apple Intelligenceの実装で進化を遂げたと言えるでしょう。

「Images (画像)」：AI画像生成と画像管理・認識

AI画像生成機能

Apple Intelligenceでは、新たな「Image Playground」アプリでAIによる画像の自動生成機能を利用できるようになりました。テキストからイメージされた絵文字を生成することもできるため、グループチャットが盛り上がることでしょう。

私はこのアプリに触れてみましたが、他のAI画像自動生成サービスとは異なり、著名なイラストレーターの画風を模倣しない画像を出力する点にユニークさを感じました。つまり、「Appleらしさ」を持っているのです。

現在のAI画像生成は、元データの収集で「ブラックボックス化」が認められており、自分の画風やスタイルを模倣されることを嫌う人も続出しています。Apple Intelligenceには、この”デリケートな部分”への配慮が感じられます。

「〇〇みたいな画像を作って」とリクエストした場合、Apple Intelligenceはユーザーが期待する画像を出さないかもしれませんが、私はこうした「独自の個性を持つAI画像生成機能」はもっと評価されるべきだと思います。

AIがイメージから画像を検索して提示

画像に関する新機能として、保存された写真を「曖昧な指示」で検索できるシステムも紹介されました。例えばユーザーがテキストで「赤いワンピースを着て踊る〇〇」といった指示を出すと、AIがそれに合致する写真を提示する仕組みです。

大量に写真を保存していると、時として”かなり昔に撮影した写真”を見つけ出すことが難しくなる場合があります。この新機能は、AIが「ユーザーの曖昧な指示を理解してタスクを実行できる」特性を発揮した素晴らしいシステムと言えるでしょう。

また、Apple Intelligenceではユーザーのテキスト指示に応じて、AIが保存されている写真や動画からオリジナルムービーを生み出すこともできます。大切な思い出を振り返るとき、この機能を活用すれば楽しさが増していくはずです。

カメラに映ったものを分析して提示・検索

iPhone16シリーズとApple Intelligenceの活用例として、カメラコントロール機能を用いた「Visual Intelligence」があります。これはiPhone本体の側面にあるボタンをクリックすることで、対象物の情報を引き出すシステムです。

例えば、外出時に見かけた知らないお店にカメラを向けて本体側面のコントロールボタンを押すと、画面にお店の詳細情報が提示されたり、散歩中の犬にカメラを向けて「犬種」を表示させたりといった「視覚情報の拡張」が可能になります。

この視覚情報の拡張には”サードパーティーとの連携”も含まれます。気になる製品をカメラで見ながら同じ製品をGoogleの画像検索機能で表示させたり、教科書にある概念図をChatGPTに尋ねたりといった使い方もできるのです。

ちなみにこのVisual Intelligence機能でカメラアプリを利用しても、撮影を行わない限りその画像・映像は本体には残らない仕組みになっています。これはプライバシーに配慮しているAppleらしい仕様だと言えるかもしれません。

「Action (実行)」：AIアシスタント機能の進化

Apple Intelligenceを搭載したiPhone16シリーズでは、AIによる優先付けと要約機能も利用できます。例えばメールでは文章の要約を表示するようになり、通知の内容もAIによって要約されます。ユーザーの利便性を高める機能です。

様々なアプリで通知機能をオンにしていると、通知の時間帯が重なり合った際に「重要な通知」を見逃すことがあります。Apple Intelligenceの実装は、こうした問題を解決する一助になる可能性を秘めていると言えるでしょう。

強化されたSiri

最近は随分印象が薄くなってしまったSiriは、Apple Intelligenceの登場と共にパワーアップを遂げました。ユーザーが言葉につまづいても話に付いてくるようになり、音声とテキストをシームレスに切り替えながら利用することもできます。

購入したApple製品でセッティングを行う際にもSiriがアドバイスしてくれるなど、これまで以上に「AIアシスタント」としての存在感を高めており、今まであまり利用しなかった人も、この機会にSiriを見直すことになるかもしれません。

SiriとChatGPTの連携

Siriは、デバイス単体のシリコンでは計算処理が難しいタスクを、「ChatGPT」に受け渡して実行できるようになりました。エッジAI(デバイス本体のAI)と大規模なAIモデルのクラウドAI(ネット経由)が連携して、回答出力の精度を高めるのです。

利用する際はユーザー自身が「ChatGPTをいつ使うか」コントロールできます。ChatGPTへのアクセスは無料で、アカウント作成も不要です。なお、ChatGPTのサブスク登録者は、自分のアカウントでログインすると有料機能が利用できます。

Appleはユーザーのプライバシーを最大限に保護するため、Siriの処理をデバイス上で完結させ、ChatGPT利用時もデータを匿名化して保存しない仕組みを採用しています。今後は誰もがAIに気軽にアクセスできるようになるはずです。

ここ数年の間、AI技術の進化とデバイスへの実装でGoogleやMicrosoftにやや遅れを取っていたAppleですが、Apple Intelligenceの誕生と生まれ変わったSiri、そしてChatGPTの連携機能によって、見事に”最前線”への復帰を果たしました。

ChatGPT・Gemini・Grokが評価するApple Intelligence

ChatGPTが評価するApple Intelligence

ChatGPTは、以前から自社製デバイスで独自のエコシステムを確立してきたAppleの功績を高く評価しており、そこにApple Intelligenceが組み込まれたことによって、ユーザーの利便性が増したことを評価している印象です。

GoogleやMicrosoftのAIとは異なり、”端末側での処理を優先”したApple独自のアプローチに関しても、ChatGPTは高い評価を下しています。AIを利用する際の懸念事項になるプライバシーへの配慮は、Appleが突出していると言えるでしょう。

ChatGPTはまた、AIをあえて前面に出さず、ただし「静かに、でも確実に働く」ようにApple Intelligenceを設計したAppleの姿勢を評価します。この設計思想は”AIの社会的受容性”を大きく前進させる可能性があるそうです。

Geminiが評価するApple Intelligence

その言動から「優等生」的なイメージがあるGeminiも、ChatGPTと同じ点を評価しています。Apple Intelligenceが”秘書”のようにユーザー情報を理解し、パーソナルなAIアシスタントとして進化していく可能性も感じているそうです。

ただその一方、現時点では一部機能の創造性や汎用性において「専門の生成AIサービスに劣る」というマイナスポイントや、利用できるデバイスがApple製品に限られているという課題にも言及しており、ここに”ライバル心”が見え隠れします。

GeminiはAppleを「クローズドなエコシステム」、Googleを「オープンなエコシステム」と捉えており、さらに汎用AIとしての自分の立場を勘案した結果、より多くのデバイスやサービスで”一貫したAI体験”を提供できるGoogleを推しているのでしょう。

Appleが「クローズドなエコシステム」を構築しているのは、ブランド保護以上に”ユーザーデータの扱い方”を重視した結果であり、オープンなGoogleの姿勢がデータ利用の点で懸念を生み出していることはGeminiも理解しています。

Grokが評価するApple Intelligence

Grokは、同じ”人工知能”としてApple Intelligenceの能力や機能を分析した際、このAIがApple製品の特定のデバイスでのみ動作する点、そして画像生成など特定の機能において競合するAIに遅れを取っている点にやや疑問を感じているようです。

GeminiやChatGPTと同様、専用OSを必要とせずに機能するGrokから見た場合、たとえプライバシー保護を優先に掲げたとしても、利用できるデバイスが限られるApple Intelligenceには確かに「ハンデ」があるかもしれません。

ただGrokはApple Intelligenceに対し、「現時点では競合に比べて機能の革新性や成熟度で劣るものの、Appleのブランド力とエコシステムの強さを活かしながら、AI民主化と普及に大きく貢献する可能性があると見ています。

現在までに巨大なマーケットでのシェア率を確立し、パソコンやタブレット、スマホやスマートウォッチなど全てをApple製品で固めるユーザーも多い中、Apple IntelligenceがAIの認知と普及を加速させることを評価しているのでしょう。

まとめ

2020年台に突入してAI開発競争が加速する中、Appleは独自のエコシステムにAIを統合すべくApple Intelligenceを発表しました。対応するデバイスでシームレスな連携を行い、ユーザーエクスペリエンスを加速させるコンテンツです。

しかしその一方、要約の誤りや複数アプリの横断ミスなど、ユーザーの期待通りに機能しなかった事象も確認されています。これは、OpenAIやGoogleなどの競合他社に勢いを与えてしまった”手痛い機能不全”と言えるかもしれません。

GoogleはAndroid XR向けの専用ヘッドセットとグラスを発表し、AI利用を視覚的に拡張する段階へと突入しています。現時点でAppleの「Vision Pro」がApple Intelligenceの機能をフルに活用できない点は、非常に残念です。

またAppleを退社したジョナサン・アイブ氏は、OpenAIのサム・アルトマンCEOとタッグを組み、2026年に「革命的なAIデバイス」を発表すべく動いています。”革命的な製品の開発”は、ジョブズ氏時代のAppleが最も得意としていたものです。

10年以上Apple製品を使ってきた身からすると、ティム・クックCEOの下でApple製品は円熟の域に達し、Apple独自の半導体(シリコン)も素晴らしい結果を残していますが、最後のピースとなる”AI”の実装でかなり遅れたように感じます。

Appleは「AI元年」と呼ぶべき2024年に独自のAIを発表し、Siriの大幅な強化も披露しました。ただ今後はApple Intelligenceの進化と並行して”革命的なAIデバイス”を生み出さない限り、AI市場で存在感を見せることは難しいでしょう。