
超高層ビルのメリットとデメリットは何でしょう?

超高層ビルは、土地の有効活用や居住者の眺望、商業施設の集約といったメリットがある一方、災害のリスクやエネルギー消費の増大、ビル風などのデメリットを持ちます。
現在東京都渋谷区に在住している私は、日常的に「超高層ビル」や「タワーマンション」をよく目にします。近代建築技術の結晶でもあるこれらは、美しい見た目を持っており、設備面でも快適な生活を提供してくれるものです。

ただAIが言及したように、超高層ビルはその特異な構造ゆえ、いくつかの課題を抱える存在でもあります。未来に向けた都市計画を実行する際、こうした課題の数々を克服することは、非常に大切になってくるはずです。
今回は記事を「前編」と「後編」に分け、超高層ビルの歴史を辿りながらその「メリットとデメリット」を考察しつつ、未来の世界で超高層ビルが「どのような進化を遂げていくのか」を、AIに予測してもらいます。

それでは早速見ていきましょう!
超高層ビルの過去と現在:そのメリットとデメリットをAIと一緒に考察
超高層ビルのはじまり
1854年:アメリカ万国博覧会
1854年、アメリカで開催された「ニューヨーク万国博覧会」の会場で、観衆の目の前で自分が乗ったエレベーターのロープを切らせた人物が表れます。観衆は悲鳴を上げましたが、エレベーターは落下することなく、途中で止まります。

自らの身体を実験台に、それまで世界に存在しなかった「エレベーターの安全ブレーキ」を披露したのは、この装置の発明家であり、後の「オーチス・エレベータ・カンパニー」の創業者であるエリシャ・オーチス(Elisha Otis)です。
エレベーターに「安全性」をもたらしたオーチス
エレベーターの概念が誕生した時代は古く、遠く紀元前のエジプト、ローマまで遡ります。ただしこの時代のエレベーターは、滑車やロープを使って重い荷物を運搬させる「簡易的な昇降装置」という位置付けでした。
産業革命が起こった18~19世紀、蒸気や水圧を動力源とするエレベーターが登場し、工場や鉱山、倉庫などで労働者や資材を運びましたが、オーチスが安全ブレーキを発明するまでは、常に危険と隣り合わせだったのです。

ロープが切れた状態でも空中で静止しているエレベーターから、「皆さん、すべてにおいて安全です!」と高らかに宣言して衆目を集めたオーチスは、同年に自身の会社を設立。自社製のエレベーターを販売していきます。
高層階への安全な垂直移動が可能に
オーチスの死後、息子たちに継承されたオーチス・エレベータ・カンパニーは、1870年台に入ると「安全機能付き」の乗客エレベーターを販売します。1878年には油圧式の高速エレベーターを発表し、事業を軌道に乗せました。
1889年、「パリ万国博覧会」の目玉として建設されたエッフェル塔にエレベーターを設置するなど、アメリカ以外でも事業を拡大していった同社は、創業170年以上を超える現在、世界で毎日約20億人が利用する企業に成長しています。

オーチスが生み出した「安全な垂直移動の実現」は、垂直に都市を発展させるという「全く新たな開発ビジョン」に大きく寄与していきます。安全で効率的に人間を運べるエレベーターの誕生が、超高層ビル構想に繋がるのです。
参考文献:「オーチスの歴史:革新と進歩の物語」(外部リンク)「エレベーター、エスカレーターをもっと知っていただくために(一般社団法人 日本エレベーター協会)」(外部リンク)

安全エレベーターの登場で、建築家は高層ビルを実用的に設計できるようになりました。

安全装置の誕生は、超高層ビルの歴史で「大きな役割」を担ったのですね。
1885年:アメリカ・シカゴ
1885年、アメリカのシカゴに高さ54.9m、10階建ての高層建築物が建てられます。「ホーム・インシュアランス・ビル」と名付けられたこのビルは、「世界初の高層ビル」として世界に知られる有名な建築物です。

このビルを設計したのは、建築家のウィリアム・ル・バロン・ジェニー(William Le Baron Jenney)。「シカゴ学派の父」と呼ばれる彼は、高層建築の分野に「鉄骨構造」を本格導入した建築家として知られることになります。
「素材・工法革命」が高層ビルの発展に貢献
従来の建設材料は木・石・レンガが主でしたが、これらの素材は重量の制約から高層建築には向かず、また1871年に起こった「シカゴ大火」以降、シカゴでは木材ではなく「鉄と石材」を中心とした迅速な復興が切望されていました。
ウィリアム・ル・バロン・ジェニーは、軽量かつ強靭な耐火性の「鉄骨」を主な建設材料に用いることで「火災への懸念」を回避しつつ、同時に強度に優れる高層建造物を生み出し、シカゴの復興に寄与することに成功したのです。

建設材料に鉄骨を用いる工法はホーム・インシュアランス・ビルが初ではありませんが、外部の石積みを完全に鉄骨フレームで支える同ビルのデザイン構想と工法は、その後世界中の建築家に採用されることになります。
ジェニーがもたらした「素材・工法革命」は、ビルの高層化を安全に行えることを証明しました。そこにオーチスが生み出した「安全装置付きエレベーター」が組み合わさることで、超高層ビルの進化と発展が進んでいくのです。

超高層ビルは、コストと耐久性を両立する高強度コンクリートや軽量素材の併用によって、現在さらにその高さを伸ばしていますが、その根底には「安全性」を確保した二名の人物の画期的な発明が息づいています。

安全エレベーターと鉄骨、つまりオーチスとジェニーの発想は、超高層ビルの誕生に不可欠でした。

人々が安全に活動できる空間がこの時代から「垂直に伸びていった」のですね。
超高層ビルのメリットとデメリットをAIと一緒に考察
超高層ビルのメリット
限られた土地の有効活用

超高層ビルは、限られた土地で多くの住戸やオフィススペースを提供でき、人口密度に対応できます。
鉄骨と安全装置付きエレベーターという発明以降、東京やニューヨークなど、大都市でその数を劇的に増やしていった超高層ビルは、空間を垂直に利用することで、地価高騰と土地不足の問題を解消していきました。

オーチス社が安全なエレベーターを初めて販売した頃、世界人口は約12億人に過ぎませんでしたが、今では80.62億人以上にまで増えています。人口が集中する都市部では、土地を垂直活用することが必須なのです。
現代の超高層ビルでは、コストと耐久性を両立した高強度コンクリートや、アルミニウム、ガラス、複合素材などの軽量素材が建設に用いられており、これがビルの長さを「さらに伸ばすこと」にも繋がっています。

都市計画と「土地を垂直に活用すること」は、密接な関係にあるのですね。
眺望の良さと環境ノイズの低減

周囲を一望できるため、都市部や観光地で超高層ビルや高層建築物は付加価値を持ちます。
眺望の良さは、タワーマンションのセールスポイントでもあります。高層階から「見渡す限りの広大な景色」を楽しめるという点が素晴らしく、低層構造の建築物とは異なる「非日常的な感覚」にどっぷりと浸れます。

また、四方を同じ高さの建造物で囲まれた低層住宅で起こりがちな「周囲の視線」を感じることも、超高層の建造物では少なくなります。窓ガラスが「真の開放感」を伴う存在になることは、大きなメリットです。
さらにメリットとして大きいのは「地上の騒音」から解消されることで、高層階では「環境ノイズ」が大幅に低減されます。こうした「聴覚・視覚上の利点」が、超高層ビルの魅力の一つと言えるでしょう。

「落ち着いた生活環境」を手に入れられるのは、高層階のメリットですね。
商業・業務機能の集約

超高層ビルは「複合化」で都市機能をコンパクトにまとめられ、便利な生活環境を提供します。
居住区と商業施設が融合した超高層ビルは、利用者に「生活の利便性」を提供できます。日々の暮らしに必要な設備や施設が入ることで「小型の都市」として機能する仕組みで、この形式は昨今の建設トレンドでもあります。

近年では日本でも低層部分に商業施設やオフィスを、高層部分に居住エリアを設けている超高層ビルも多く建造されており、複合化が加速化しています。人口密集問題のより良い解決方法として、この流れは今後も続くでしょう。
例として、2023年に営業を終了した渋谷の東急百貨店本店跡地には、地上36階・地下4階・高さ164.8mの複合施設が建設される予定で、ホテルと賃貸物件、各種の商業施設が入る複合型超高層ビルとして生まれ変わります。


再開発が進むエリアでは、複合型の超高層ビルが建てられることが多くなりました。
ランドマークとしての超高層建築

超高層建築は都市や企業のステータスを示す存在、つまり「ランドマーク」になります。
都市の発展と技術力の象徴として超高層建築を海外へアピールすれば、国家は観光ビジネスにおいて存在感を示すことができます。エリアの象徴として「ランドマーク」を作るとインバウンド需要を増やせる、というAIの分析です。

世界のランドマークの例としては、ニューヨークのエンパイアステートビル、韓国のロッテワールドタワー、日本の東京スカイツリーやあべのハルカス、アラブ首長国連邦のブルジュ・ハリファなどがこれに相当します。
超高層を実現する建設技術・素材の進化
ブルジュ・ハリファの高層部分は「アルミニウムパネル」と「強化ガラス」で外装を軽量化しており、風圧を軽減します。また東京スカイツリーの部材は、標準的な鉄骨よりも約2倍強い鉄「高強度鋼菅」です。

設計技術の研鑽と素材革命は現在も続いており、これが世界的な高層建造物の建設ブームにも繋がっています。超高層建築を技術力のステータスとしてランドマーク化する流れは、今後も世界的なレベルで起こることでしょう。

超高層建築は、実用と象徴を兼ねた存在として進化しているのですね。
超高層ビルのデメリット
災害リスク

超高層ビルやタワーマンションは、地震や火災などの災害時におけるリスクが高まります。また超高層ビルは多くの人が一度に避難する必要があるため、災害時に混乱を招きやすくなります。
地理的に地震が少ない国であれば問題ありませんが、近年大地震が多発しているここ日本では、高層ビルの災害リスクは憂慮すべき課題です。2011年の東日本大震災では、超高層ビル固有の「長周期振動」も大きな話題となりました。

震災発生時に超高層ビルの真下にいる人は、破損した窓ガラスや看板などが上から降ってくる危険と隣り合わせになるため、揺れを感じた際に迅速な退避行動が求められます。特にビルが多い場所では、普段から用心することも大切です。
ビル内に居る人に突きつけられる課題
災害時にエレベーターが停電などによって停止した場合、ビル内部に居る人は「非常階段」で避難することになります。低層階に居る人はまだしも、数十階以上の高層階に居る人にとって、徒歩での移動は大きな負担になるでしょう。

超高層ビルにおける避難の難しさは、2001年にテロの標的となったアメリカの「ワールドトレードセンター(世界貿易ビル)」の事例を見ても明らかで、時間的な制約が発生した場合、避難者と救助者の両方に負担がかかります。
近年は日本でも積極的に耐震構造の導入が進められており、ビル自体が倒壊する恐れは限りなく少なくなっていますが、垂直避難の難しさは根本的に変化しない部分なので、画期的な移動方法を考え出す必要があると思います。

日本では「災害に強い超高層ビル」を生み出す必要がありますね。
「ビル風」のリスク

ビルの周囲で強風(ビル風)が発生した場合、歩行者や環境に対して影響を及ぼすことがあります。
超高層ビルに当たった風の流れが急激に変わり、建物の周囲で風速が急激に増す現象を「ビル風」と呼びます。私も過去に超高層ビルのそばで何度か怖い思いをしました。特に台風シーズンには十分な注意が必要です。

ビル風が災害クラスの強風と連動した際には「歩行困難」になる場合があるため、通勤や通学でどうしても大きなビルの下を歩かなくてはならない人は、あらかじめ「迂回コース」を探して決めておくと安心でしょう。
超高層ビルとビル風は「セット」のようなもので、これを完全に排除することはできません。都心部の人口密集を解消する「代償」として、付近の歩行者はこの強烈なビル風と対峙していくことになるのです。

私は強風の日、なるべく超高層ビルの真下を歩かないようにしています。
コスト・環境面の問題

高層建築になるほど維持管理や運用にかかるコストが増加し、環境負荷が大きくなる傾向があります。
電力確保は超高層ビル最大の課題です。現在は環境への負担を削減すべく、省エネルギーでビルの運用を目指す国・企業も増えています。世界的な「脱炭素社会」の実現を目指しながら、ビルの建設と運営を両立させる必要があるでしょう。

運用コストの削減は超高層ビルに与えられた「長期的な課題」ですが、三菱地所が丸の内のビルを「再生エネルギー由来電力」へ切り替えているなど、脱炭素化社会に向けた取り組みはここ日本でも着実に広がっています。

超高層ビルが持つ課題に向けた今後の取り組みに注目したいですね。
前編まとめ
人間を運ぶための「安全性」を確保したエレベーターの登場、強度を保ちつつ階層を積み上げられる「鉄骨」の本格導入は、ビルの高さをさらに上へ伸ばすことに成功しました。超高層ビルは、今や日常的な光景です。

世界的な人口増加に伴う「都市部への人口密集」を解消する手段としての超高層ビルは、地価高騰や建築面積不足を解消し、時に観光客を呼び込む「ランドマーク」としての役割も果たしながら、我々の生活を支えています。
ただし現在の超高層ビルは便利な一方で、災害時の課題やコスト・環境面のリスクも付いて回るため、決して手放しで絶賛できる建築様式ではないという点も事実で、さらなる技術革新が求められていくはずです。

記事の後編では、超高層ビルが抱える課題を克服した実例を見ながら、AIに「超高層ビルの未来予測」を出力してもらい、現在の超高層ビルが持つ課題を解決する未来像に迫っていきます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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