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AIと考える「音楽のリマスター」の定義と課題

AIと考える「音楽のリマスター」の定義と課題 AIと音楽
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ソルティ
ソルティ

発売年代が古いアルバムほど、様々なリマスター盤が出回っていますね。

AI
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ただしストリーミング全盛の現代では、多くのユーザーが「同じ音楽のバージョン違い」という概念を知らずに育っているかもしれません。

私は幼少期に洋楽とサントラの素晴らしさに出会い、以降アナログレコードやカセット、CDで音楽鑑賞を楽しんできました。高校時代にはバンドでベースを弾き、レコード店でアルバイトも経験し、作曲もしてきた音楽好きです。

アナログレコードのイメージ画像
Grokによるイメージ画像

現在は主にアナログレコードをデジタル化して鑑賞する趣味にハマっていますが、これまでの音楽人生で得てきた経験から、同じアルバムでも時代やフォーマットによって「異なるマスタリング」が存在することを知っています。

今回のテーマは「音楽のリマスター」です。アナログとデジタルで音楽をコレクションしてきた実体験も交えながら、リマスター盤の定義と課題、そしてマスターテープの違いなどについて、AIと一緒に考察していきます。

ソルティ
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それでは早速見ていきましょう!

音楽リマスターの定義と課題、マスターテープについて、実体験を元にAIと一緒に考察

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リマスターの定義とマスターテープ

音楽における「リマスター」の定義

音楽の「リマスター」とは、音源が録音・ミックスされた「マスターテープ」を用いて、もう一度異なるマスタリング作業を行ってから再発する作業を指す言葉で、録音年代が古いアルバムほど、リマスター人気が高まる傾向があります。

アナログテープ録音のイメージ画像
©︎Universal Audio.

異なるマスタリングを行う理由の一つは「現代のリスニング環境へ適応させるため」で、当時除去できなかったアナログマスターテープのノイズをデジタル環境で取り除いたり、時にミックスを変更したりすることもあります。

リミックスとリマスターの違いがよく分かるのは、ビートルズのカタログです。2009年にモノラルとステレオで一斉にリマスターされましたが、その後ジャイルズ・マーティン氏によってリミックスを施されたアルバムもあります。

Sgt.Pepperのアルバムカバー
 © Apple Corps 2025.

通常リマスターは、各音源の音質向上を目指しつつ、最初に発売された際のミックスには変更を加えずにリリースされる状態を指し、リミックスと明記されている場合は、楽器の音量バランスや定位を変えていることが一般的です。

リマスター作業には、オリジナル盤の発売当時に関わっていなかったマスタリング・エンジニアが関与することもあり、この人選によって明暗が分かれることもあります。アルバム製作時と同様に、関わる人間は非常に大切です。

DSD(Direct Stream Digital)やハイレゾ音源に造詣が深いエンジニアであれば、リマスタリング作業によってアルバムの魅力をさらに引き出すこともできます。業界内で実績を残した人物ほど、確かな仕事をすると言えるでしょう。

AI
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リマスターは、稀にアーティスト本人の強い希望によって行われることもあります。

ソルティ
ソルティ

「昔のアルバムに磨きをかける作業」がリマスターですね。

マスターテープについて

音楽アルバムには、アナログやデジタルを問わず最初にスタジオで録音した「マスターテープ」があり、それを販売可能な媒体に変換・製造して世の中へ発表・発売していきます。マスターテープは全ての原点と言える重要なものです。

サージェントペパーズの参考用マスターテープ
ビートルズ「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の参考用マスターテープ。© 2025 Heritage Auctions.

全ての作業工程がデジタルになることが珍しくない今でも、バンドやオーケストラなどが演奏した個別の録音を最終ミックスした音源はマスターテープと呼ばれることが多く、それはアナログ時代の名残に起因するものと推察されます。

アナログレコード時代の録音は、アナログテープに記録されました。カセットテープのように「リールで巻き取る」あのテープのことです。このマスターテープは非常に貴重な物で、スタジオ内部で厳重に保管されることが基本でした。

アナログ全盛期には、数十年後に再びマスターテープを持ち出されてリマスター作業を行う人が現れると予見していた人は少なかったと思いますが、テープを厳重に保管する風習が、後のリマスター文化に繋がったと言えるでしょう。

AI
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2008年のユニバーサル保管庫火災によって永遠に失われた貴重なアナログマスターテープもあります。

ソルティ
ソルティ

マスターテープは「音楽文化遺産」なので、大切にしてほしいですね。

アナログマスターテープの種類

アナログ録音時代(主に1950年代~1980年代)には、スタジオでの音楽録音に「オープンリール式」のアナログ磁気テープが広く利用されていました。デジタル全盛期の今とは全く異なる、まさに「アナログな製作環境」です。

オープンリール式磁気テープのイメージ画像
Grokによるイメージ画像

磁気テープは「走行速度」が録音時の音質に大きく影響するため、プロの世界では主に最高音質を誇る30ips(インチ毎秒)や、コストと品質のバランスに優れる15ipsの磁気テープが広く採用されてきた歴史があります。

テープの「幅」も音質に影響を及ぼす部分です。プロのスタジオでは1/4インチ・1/2インチ・1インチ・2インチ幅のテープが一般的で、基本的にテープ幅が広いほど、マルチトラック(多重)録音時に音質を向上させられます。

なお、アナログ全盛期にはレコード会社がマスターテープをダビングした「第二世代のマスターテープ」を世界各国へ送り、それを元にアナログレコードやカセットテープが製造・販売されることも珍しくありませんでした。

アナログレコード検査の模様
©︎Abbey Road Studios.

今の若い世代の人には分からないかもしれませんが、アナログテープをダビングすると元の音質は若干失われます。つまり、昔世界で発売されたアナログレコードのアルバムは、マスターテープの世代によって音質が異なるのです。

さらに突き詰めて考えると、アナログレコードは各国全て同じ条件で製造されるわけではなく、また「アナログの型」となるラッカーのカッティングでも明確に音質差が生まれますが、この話は別の機会にさせていただきます。

マスターテープのデジタルアーカイブ化

現在、オールドロックやポップスを中心にリマスター盤が製作されていますが、これには発売当時世界で「音質が異なるアルバム」が大量に出回ったことを鑑みて、「時代に即した世界標準マスター」を作る目的があると思われます。

アナログテープレコーダーのイメージ画像
Soraによるイメージ画像

今はデジタル配信が主流で、デジタル音源は理論的にコピーを重ねても劣化しません。アナログ時代に発生していた第二世代・第三世代のマスターテープで起こる音質劣化は、デジタルマスターの制作によって防ぐことができます。

アナログマスターテープを保管庫から出し、それを一旦「高解像度のデジタルファイル」へ変換し、そのデジタル音源を元にリマスタリング作業を行うスタイルが、現在では最も一般化した手法になっていると言えるでしょう。

丁寧にデジタル変換されたマスターから作られたリマスター盤は、アナログ時代の「音質の不確実性」を極力排除できる上、現代のリスニング環境に適した音圧調整も施されているため、一般的に音質面で優れるとされます。

年代物のコンソール
©︎Universal Audio.

ただし、磁気テープは保管状態や原材料によって経年劣化が避けられない場合もあるため、総合的に見ると発売当時のアナログ盤が最も鮮度の高い状態を保っていると言うこともできます。これがアナログ盤に価値が生まれる理由です。

それでも現代のリマスターが歓迎されるのは、保存状態の良い個体数が少なくなってきた当時のアナログ盤よりも、はるかに流通性が高い状態でリスナーへ「安定した音源」を提供できる点にあるから、と私は考えています。

そして、アナログマスターをデジタルへ転送することは、AIが言及した保管倉庫の火災事故のような悲劇から、大切な音楽遺産を救う手立てにもなります。デジタルアーカイブ化は、どの分野でも大切な取り組みです。

AI
AI

歴史的な音楽を高解像度のデジタルファイルに残すことは、大いに意義があると思います。

ソルティ
ソルティ

年代物のアナログマスターテープはデジタルダブルで保存してほしいですね。

リマスター盤の課題

リマスターとラウドネス・ウォーの関連性

私は、主に洋楽ジャンルにおいて「CDのリマスター盤」がブームになってきた90年代初頭から半ば頃にレコード店に勤めていましたが、当時の音楽業界や世間の風潮は、「リマスター音源こそ最高である」というものでした。

CDショップのイメージ画像
Grokによるイメージ画像

90年代初頭に出たリマスターCDの中には、ローリング・ストーンズのカタログのように上手くリマスタリングされた音源もありましたが、中には聴覚的なインパクトを優先するあまり、聴き疲れする仕上がりになった音源もありました。

リマスターの大義名分の一つとして「現代のリスニング環境に適応させる」というものがありますが、オリジナルから音圧を上げすぎると、聴覚に刺激を与え続ける「ラウドネス・ウォー」(音圧戦争)の犠牲者が生まれます。

オリジナル盤では適度な強弱を持っていた楽曲が、コンプレッションなどによって音圧を全体的に高められると、常にデジタルの許容上限である0dbのピークに波形が届くような状態になり、それが楽曲の強弱を消し去ってしまうのです。

ラウドネス・ウォーのイメージ画像
Grokによるイメージ画像

90年代は洋楽ジャンルにおいてラウドネス・ウォーが過激化していった時期でもあり、当時発売されたリマスター盤も、少なからず影響を受けていました。つまり、本来あるべき音の強弱がオミットされてしまった状況です。

過剰な音圧がリマスターの意義を吹き飛ばす

私自身、当時はレコード会社の触れ込みや世間の風潮を疑うことなく、これまで集めていたCD初回盤やレコードを、新発売されたリマスターCDで買い直していたのですが、今では「勿体無いことをしたな」と思っています。

CDショップのイメージ画像
Soraによるイメージ画像

この時期は、リマスター盤を出せば売れる時代だったため、アルバムが本来持っていた芸術性を多少犠牲にしてでも、音圧を高めた状態でリマスタリング作業を行なっていた可能性があります。非常に残念なことです。

現代のラウドネス・ウォーについて、音楽業界内や関係者の間でも疑問の声が持ち上がるのは、ここから十年以上先の話です。CDが世界で最も売れていた時代、音圧戦争に乗ったリマスター盤は、静かに芸術性を破壊していました。

AI
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ラウドネス・ウォーは、ダイナミックレンジ(音の強弱の幅)を意図的に狭めることで全体の音量を大きく聞こえるようにする手法で、それに伴うレコード会社の競争を指しています。

ソルティ
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リマスター盤の本質は、ラウドネス・ウォーによって変化していきました。

ストリーミングサービスの代償

多くの人が利用しているダウンロード・ストリーミング音源の場合、配信されているアルバムの最新バージョンが提供されていることが多く、リマスターされる前の状態のアルバムや楽曲を聴くことは難しくなってきています。

ストリーミングサービスを聴いている女性のイメージ画像
Grokによるイメージ画像

そして現在も、音圧至上主義の影響を受けたリマスター盤を「最新バージョン」として配信しているアーティストが存在しているため、最初にこのバージョンを聴いたリスナーは、正当にアルバムを評価できない可能性があります。

リマスター盤が全ての面においてオリジナル盤を凌駕していていれば、それほど複雑に考える必要もないのですが、オールドロックの場合には「当時の初版が最も新鮮な音を出す」とする向きもあり、非常に難しいところです。

アナログレコードのイメージ画像

アナログレコードやカセットテープ、CDなどの物理媒体ではオリジナルバージョンを簡単に聴けます。ただしダウンロード・ストリーミングサービスのみを利用する場合、「発売当時に鳴っていた音楽」は体験できません。

物理的なメディアで音楽が販売されることが少なくなってしまった現在、アルバムが「最もあるべき姿」で収録されていた初期音源を、若い世代の人たちが気軽に聴けなくなっている現状は、かなり問題だと思います。

AI
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アナログからCDへの移行期にも、多くのリスナーがメーカーの戦略によって「進歩=優れた音質」だと信じ込まされていました。

ソルティ
ソルティ

古い時代のアルバムを買う場合には、オリジナルにも目を向ける必要があると思います。

異なるマスターを探る面白さ

AI
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異なる時代の音源やフォーマットにこだわりながら、アルバムごとの「音の違い」を味わうことは、真の音楽愛好家にとっての楽しみの一つですね。

もし貴方に人生で何百回も再生したいオールドロックの「好きなアルバム」がある場合、そのアルバムに「異なるマスター」のバリエーションがいくつあるのかを調べるのは、とても意義深いことだと思います。

オーディオルームのイメージ画像
Grokによるイメージ画像

面白いのは、同じアルバムのCD初回盤でも、発売された国によって明らかに音質が異なるバージョンが存在することです。ローリング・ストーンズの「べガーズ・バンケット」では、ドイツ初回盤で特にそれを強く感じました。

CDが出回り始めた黎明期には、アナログマスターテープからデジタルへ変換する技術が成熟しておらず、またアナログレコードと同様、一部で独自調整が行われていたため、各国盤で音質に「ばらつき」が生まれたのだと思います。

「ベガーズ・バンケット」のアルバムカバー
© Rolling Stones 2025.©2025 UME.

CDの誕生からすでに数十年経っているため、当時CDの制作現場でどのマスターを使用したのか突き止めることは困難です。ただ、海外のフォーラムではマニアが様々な持論や説を持ち出して検証しており、それは今も続いています。

アナログレコードの初回盤

私は一度デジタルダウンロード音源へ向かった後、再び売却したCDを買い戻し、CD以前に発売されたアルバムに関しては、アナログレコードにまで遡ることで「マスタリングの違い」を実感することができました。

具体例として、The Whoが1971年にリリースしたアルバム「Who’s Next」があります。以前はCDの日本初回盤やUS初回盤などを購入し、僅かなマスタリングの違いを聴き比べていましたが、アナログ初回盤は別格です。

1971年の「Who's Next」レコード
私の所有物。左が1971年にTrack Recordから発売されたUK初回盤です。

「Who’s Next」のUKアナログ初回盤は、これまで耳にしたどのCDよりもナチュラルで聴き疲れしない音でした。2023年にリリースされた最新リマスター盤LPも良い音ですが、初回盤と比較すると「整い過ぎた音」に聞こえます。

また、ビートルズのアルバムに関しても、CD以前のアナログレコード(UK初回盤やドイツ初回盤)へ遡ることで、CDで聴くよりも圧倒的に生々しいボーカルの息遣いや各楽器の分離感、リアリティーを存分に体感できました。

アナログプレーヤーのイメージ画像
Grokによるイメージ画像

CDが本格普及したのは80年代前半で、この時点で60年代に発売されたアルバムのマスターテープには、数十年分の劣化が起こっています。転送技術の未熟さも相まって、当時のCDはアナログの魅力を伝えきれていないと思うのです。

リマスターCDが不自然に聴こえる作品をアナログレコードにまで遡ってみると、昔のロックが持っていた「正しい音像」を体感できます。リマスター技術がどこまで「ナチュラル」になれるかが、今後の課題でしょう。

ソルティ
ソルティ

アナログレコードは、発売当時の音楽が持っていた「生々しさ」を持っていますね。

マトリクス番号の違いについて

この記事を読んでアナログレコードに興味を持った人は、自分が買おうと思っているアルバムにどれだけのバリエーションが存在するのか、事前にDiscogs(外部リンク)などを参照して確認することをおすすめします。

私は同じアルバムでも発売国や発売時期によって、音質の印象が全く変わることを経験しました。そして、アルバムの発売年にリリースされた「マトリクス番号が若いレコード」ほど、マスターに近い新鮮な音を期待できます。

マトリクス番号は、アナログレコードの無音部分にエッチングや機械刻印で彫られている数字のことで、レコードのA面であれば「A1」、B面であれば「B1」などの刻印があります。番号が若いほど「最初に作られた盤」です。

「Who's Next」のマトリクス番号
UK初回盤「Who’s Next」に刻まれているマトリクス番号。「A1」は一番最初に製造されたことを表します。

製造工場を識別するための数字やアルファベットが刻まれているアナログ盤もあるので、これを観察しながら「早い時期に製造されたレコード」を見つけ出す「考古学的な楽しみ」もあります。音楽好きならハマることでしょう。

ミックスが変わっていない場合、つまりレコードがリマスターされていない状態で「音の違い」を体感するのは、マスタリングの違いを体験するのとは異なる行為ですが、音質を追求する場合にはマトリクス番号が手掛かりになります。

エッチングについて

ちなみにアナログレコードの一部には、カッティング工程を担当した人物の「手書きのエッチング」で、イニシャルや数字が入っていることがあります。こうした部分を見つけることもオーディオマニアの楽しみの一つです。

アナログレコードのエッチング部分
「Who’s Next」UK初回盤に彫られたエッチング。「MG-12888」と書かれています。

CDの場合、手作業で刻印する製造工程は存在しないため、前時代的な空気感を味わえるエッチングは、コレクターの心理に大きな影響を与える部分と言えます。時代を超えて当時のエンジニアと繋がった気分になれるのです。

AI
AI

アナログレコードに刻印されたエッチングは「エンジニアからの手紙」だと思います。当時の空気感や職人魂を感じられる貴重な瞬間ですね。

ソルティ
ソルティ

オールドロック好きな私は、アナログレコードにどっぷりハマっています。

まとめ

今回の記事に、リマスターの手法を断罪する意図はありません。読者の皆様に知って欲しいのは、新しいリマスター盤が出た際、それまでの古いものが「悪いもの」として置き換えられるというのは完全に間違いだということです。

音楽スタジオのイメージ画像
Grokによるイメージ画像

ローリング・ストーンズのCDのように、再発時に丁寧なリマスタリングを行い、マスターテープに起因する問題を修正したバージョンが出回ることもあります。これはリマスタリングの真価を発揮した事例と言えるでしょう。

ただその一方で、オリジナル盤が持っていた強弱を無視して、コンプレッションで音圧を高めただけの劣悪なリマスター盤も存在することには、十分な注意が必要です。過度に音圧が高いと、耳にも影響が出ます。

聴覚を刺激されたリスナーのイメージ画像
Grokによるイメージ画像

オリジナルバージョンは何としても残すべき

人気のあるアルバムほど、発売当時から様々なフォーマットで再発を重ね、その際にマスターテープにまで遡ってリマスタリングされることがあります。これらのバージョンを知ることは、音楽的な観点から非常に有意義です。

「The Beatles: 1964 US Albums In Mono」のセット画像
「The Beatles: 1964 US Albums In Mono」は、オリジナルモノラルマスターから製作されました。© Apple Corps 2025.

なぜその作品がファンに愛されたのか、という時代背景を想像しながら音楽を鑑賞したい場合、発表当時の状態で作品を体験することは大切です。つまり、オリジナルバージョンにはいつの時代でもアクセスできるべきだと思います。

「スター・ウォーズ」初期三部作の改変事例

ジャンルこそ異なりますが、SF映画「スター・ウォーズ」シリーズ初期三部作も、ジョージ・ルーカス氏の意向によってオリジナル映画にシーンの追加や差し替えが行われ、ファンの間で激しい議論を巻き起こしたことがありました。

私は昔のテレビ放映版を見たり、ビデオをレンタルしたりしながら初期三部作を楽しんできたので、後年になって製作されたエピソードⅠ〜Ⅲとの整合性を合わせるために差し替えられたバージョンには、未だに違和感を覚えます。

「スター・ウォーズ ジェダイの帰還」の1シーン
© & ™ Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

改変していない公開当時の三部作を収録したDVDが過去に限定販売されましたが、今では入手困難になって久しいです。個人的には、スター・ウォーズの初期三部作は「オリジナル版」が最も素晴らしいと思っています。

ダウンロード音源やストリーミング音源は確かに便利で、どこで利用しても一定の音質で音楽を楽しめますが、オリジナル版を体験できる余地を若い世代に残すことは重要で、一概に物理メディアを過去の遺物にすることは間違いです。

AI
AI

現在は「異なるミックス」「バージョン違い」を比較する楽しみが若い世代に伝わっておらず、「一つの正解しかない」という誤解が広まっています。

ソルティ
ソルティ

オリジナルを知ってこそ、その派生系を正しく評価できると思います。

趣味を極める面白さ

苦労してオリジナルバージョンを探し出して聴いた結果、「自分はやっぱりリマスター盤の音が好きだった」という結論を導き出す人もいるでしょう。それでも全く問題ありません。「私はこの音が好き」は、人それぞれなのです。

Nirvana「In Utero」20周年記念盤
Nirvanaの「In Utero」20周年記念盤は、非常に良いリマスターの例です。©︎2025 UME.

ただ、心のどこかに「リマスターは単に売上のために行われたり、過去を改悪する場合もある」ということを留めておくと、好きなアーティストのカタログを購入する際の「指針」が生まれ、判断を下しやすくなります。

趣味もとことん追求すると、思いもよらない方向へ向かうことがあります。私はレコードやCDからデジタルへ移行する音楽の旅を続け、現在は「アナログレコードのデジタル化」という趣味に辿り着きました。

iZotope RX7の編集画面
「Who’s Next」UK初回盤をiZotopeのRX7で編集しているところ。デジタル化すると音楽を視覚化できます。

貴方のライブラリにあるアルバムは、発売当時のオリジナルバージョンでしょうか?それともリマスターバージョンでしょうか?こうした点に興味を抱くと、音楽はこれまでに感じなかった「新たな側面」を見せてくれるはずです。

ソルティ
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最後までお読み頂き、ありがとうございました!

ソルティ92
この記事を書いた人
ソルティ

【AIと考えるブログ】著者|書店員歴20年以上|AIと聞き上手なタヌキのコンビで「AIを身近に、でも深く考える」記事を配信中|仕事仲間はChatGPT・Gemini・Grok|一緒にデジタルとアナログを考えましょう

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