
AIは巨大地震への対抗手段になりますか?

現在、世界の地震発生国を中心にデジタルAIとフィジカルAIを用いた研究や取り組みが行われています。
過去編では歴史に名を残した巨大地震を追い、現代編では巨大地震に対する世界の取り組みを見てきました。未来編の今回は、デジタルとフィジカルに分かれるAIを活用して自然災害に立ち向かう人々のお話です。


それでは早速見ていきましょう!
AIと考える巨大地震の過去・現在・未来「未来編」|デジタルAIとフィジカルAIで巨大地震に立ち向かう世界の事例を考察
デジタルAIを用いた地震解析の取り組み
アメリカ|「一週間前の地震予知」をAIで実現
テキサス大学オースティン校の研究チームは2023年、中国でAIアルゴリズムを用いた地震予測実験を行い、地震発生一週間前にAIが予測した地震が、その後70%の確率で発生するという成果を挙げました。

7週間という期間内でAIは14件の地震を一週間前に予測し、震度もほぼ正確に算出しています。1つの地震を見逃し、8件の偽警報も出しましたが、注目すべきは地震の検知時間が大幅に伸びている点です。

現在の地震警報システム(EEW)は”主要動の数秒〜数分前”に警報を出しますが、もし一週間前に巨大地震を探知できるシステムが誕生すれば、避難と防災の有り様も大きく変わることでしょう。

この地震探知システムはまだ実験段階ですが、AIの活用で「巨大地震に備える時間」を大幅に拡張できる事例だと思います。

一週間の猶予があれば、対象地域で様々な防災対策を行えそうです。
中国|AIによる地震の完全自動監視システム
中国科学技術大学(USTC)と中国地震局(CEA)の共同プロジェクトとして誕生した「EarthX」は現在、AIによるリアルタイムの地震監視と情報提供を行う「Smart Earthquake™」システムを稼働中です。

ユニークなのは地震情報解析に「AI画像検索」を用いている点で、AIが地震波を膨大な画像データパターンから瞬時に分類し、「過去の地震との類似点」を従来の計算方式よりも速く特定します。

また、限られた地震観測網をAIで補完するために、少ないデータから予測補完できる”圧縮センシング技術”を採用し、点在する地震データから任意の地点のデータを再構築している点も特徴です。

”AIが得意なこと”を地震観測と解析に応用しているSmart Earthquakeシステムは、従来の地震学的手法をAIの力で前進させた好事例で、観測・分析・警報の分野で存在感を発揮していくことでしょう。

未だ解明されていない地球の複雑な地層構造をAIのパターン解析で補っている事例です。

計算精度が向上すれば広範囲の地震予測も可能になりそうです。
インド|AIを活用した地震早期警報システムの開発
インドのグジャラート州では現在、地震研究所(ISR)が”AIを活用した地震早期警報システム(EEWS)”の開発に着手しています。同州は2001年の「インド西部地震(M7.7)」で甚大な被害が発生した地域です。

ISRの元所長で、現在はインド工科大学ルールキー校の教授であるスメール・チョプラ博士は、The Times Of Indiaの取材で、「AIベースの地震早期警報システムの設計には時間がかかる」と述べています。

ISRは地震危険地帯であるグジャラート州のハザードマップを完成させており、現在は地震対策プロジェクトを複数抱えている状態です。多くの命を救うため、早期警報システムの完成が待たれます。

インドでは多層センサーデータとAIの組み合わせで防災効果を高める未来の方向性が示されています。

地震予測研究が加速していくと良いですね。
日本|AIを用いた地震予測の実験
京都大学の研究グループは2025年、AIを用いた人工地震データ解析の結果を発表しました。この実験では”前震活動の特徴”をAIが捉え、人工地震が発生する時刻を高精度に予測しています。

このAI予測を人工地震ではない”自然の大地震”に換算すると、数十年から数週間前の予兆をAIが捉えたことに匹敵するそうで、研究のさらなる進展と実用化に期待が高まっている状況です。

実験環境が制御されているため、「AIが何を学習しているか検証できる」という点で優れた事例です。

日本でもAIを活用した地震予測の取り組みが進められていますね。
フィジカルAIを用いた被災地支援の取り組み
日本|四足歩行AIロボットによる避難者の誘導支援
陸上自衛隊は、2024年の能登半島地震に伴う孤立集落住民の避難所移動支援に伴い、四足歩行AIロボット「Vison 60」を現地へ投入して、二次避難所への経路偵察と住民の誘導支援を行いました。

Vision 60はアメリカのGhost Roboticsが開発した自律移動可能なAIロボットで、災害支援用途にも応用可能です。全天候型の強靭なフィジカルAIで、足場が不安定な場所も難なく歩行できます。

Vision 60のソフトウェアには、地図上にサーマル画像や人物・車両を重ねてリアルタイムで表示する機能があります。人間が立ち入り困難な被災地の情報収集や支援活動にも活用できるでしょう。

Ghost Roboticsの公式HPにも、能登半島地震での投入が成功事例として記載されています。日本はこのロボットの”被災地支援における優位性”を世界に証明しました。

フィジカルAIの被災地支援は今後も増えていきそうですね。
欧州連合|ドローンと小型ロボットで被災者を発見する取り組み
欧州が中心の共同研究プロジェクトCURSOR (外部リンク)は、瓦礫の下敷きになっている生存者を発見する救助方式として、小型AIロボットとドローンを組み合わせた次世代型の災害救助モデルを発表しました。

プロジェクトの主役はセンサー付き小型AIロボット”SMURF”で、運搬用と偵察用に分かれるドローンが上空支援を行います。運搬用ドローンが上空からSMURFを切り離し、地上に降り立ったSMURFが活動する流れです。

災害発生から72時間が”生存率が大幅に低下するタイムリミット”と言われます。同プロジェクトは、人間による捜索の”危険性”を排除しつつ、最新技術で効率的に生存者を発見するために生まれました。

プロジェクトの実証実験と最終デモンストレーションは2023年に終了していますが、今後はこの探索方式を実際の災害現場で活用するための取り組みが各国で起こっていくことが予測されます。

国際的な評価も高く「災害救助レベルを高める」という点で、今後このプロジェクトは世界的な影響力を持つ可能性があります。

フィジカルAIは”危険が伴う作業の代替”で本領を発揮できますね。
未来編まとめ
デジタルとフィジカルに分かれるAIは、それぞれの長所を活かすことで”地震解析と被災地支援”に役立つことが分かりました。今は黎明期の段階と言えますが、これらの研究は必ず未来で花開くことでしょう。

一方、AIに重要な判断や行動を任せる際の「責任の所在」は、今後も議論を深めるべき課題と言えます。多くの人命がかかっている作業において、AIが下す判断の”透明性”を確保することは必要不可欠です。

巨大地震に翻弄されてきた人類は、長い時間をかけて自然災害に立ち向かうための”高度な技術力”を手に入れました。これ以上犠牲者を増やさないために必要なことは何か?未来へ向けた人類の挑戦は続きます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!


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