
AIはゲームで「より自然な動き」をするキャラクターを生み出せますか?

実際、AI技術の進化はゲーム内のキャラクターモーションに大きな影響を与えつつあります。
当サイトの過去記事「AIと考えるMMORPGの未来」では、AIをオンラインゲームの開発・運営に参加させる未来を見てきましたが、今回はゲーム内における「キャラクター制御」にスポットを当てていきます。

未来のゲーム開発においてAIと人間の共同作業が上手く機能すれば、「かつて見たことがないスムーズな動き」をするキャラクターを生み出せる可能性があります。前半のテーマは「AIキャラクター制御の可能性と課題」です。

それでは早速見ていきましょう!
AIにゲーム内のキャラクターを制御させる利点とその課題をAIと一緒に考察
AI制御で実現する「リアルなキャラクター」
「モーションキャプチャーデータ」の処理

AIをキャラクター制御に活用することによって、従来の「モーションキャプチャーデータ」をより効率的かつ正確に処理できるようになります。
「モーションキャプチャー技術」とは、事前に人間の動作をカメラでキャプチャー(捉える)して、それを3DCGソフトへ取り込むことで”リアルなキャラクターの動作”を生み出す技術で、SF映画やゲームで多数の導入実績があります。

モーションキャプチャーデータには、「フレームの欠損」「不自然な動き」「アクター(演者)の意図しない挙動」という欠点がつきものですが、AIを導入すれば、該当するフレームの自然な補間やノイズ除去を行うことができます。

またAIに大量のデータを学習させることで、「どんな動きがどの文脈で使われるか(例:走る→止まる→振り向く)」を理解しながら「意味としての動き」も解釈して表現するため、キャラクターの動きが一層リアルになるのです。


AIは「処理精度向上」と「創造性の拡張」の両面で、ゲーム内キャラクターのモーションキャプチャーデータが持つ可能性を押し広げる鍵になります。

AIが大量に学習すればリアルな動きの完成度も高まりそうですね。
プロシージャルアニメーション

AIを用いたプロシージャルアニメーションは、キャラクターの動きをリアルタイム生成でき、ゲーム内の地形や状況、キャラクターの感情などに応じて柔軟に動きを変化させられます。
「プロシージャルアニメーション」とは、予め開発者が手作業で積み重ねたモーションではなく、「アルゴリズム」によってリアルタイムでキャラクターの動作や表情を生成する手法です。この分野をAIに任せるとリアルさが増します。

例えば、ゲームマップの坂道ではキャラクターが重心を前に傾けて歩く動作へ切り替わる、敵キャラクターの攻撃に対して体をひねりながら回避するといった動きも、ゲームプレイ中にAIが”自動生成”できる分野です。

これにより、従来のモーションキャプチャーでは難しかった「環境に即した自然な動作」や「キャラクターの個性を反映した動き」をリアルタイムに表現できるようになります。”感情を込めた動き”も楽しめるでしょう。


落ち込んだ時には足取りが重くなる、元気な時は跳ねるように歩く、緊張しているときはキョロキョロと周囲を見渡してぎこちなくなる、といった動作の切り替えもできます。

「性格設定」と「感情パラメータ」があれば、AIは随時調整できるそうです。
ディープラーニングの活用

ディープラーニングを活用することでAIは人間の動作データを膨大に学習し、キャラクターの動きのパターンやその意味を深く理解できるようになります。
ディープラーニングの活用は、プロシージャルアニメーションの精度をさらに高めます。既存のモーションライブラリには存在しない複雑なアクションや動きが、AIの考えによってゲーム内で自在に生み出されるのです。

これまで「事前に収録された動作の組み合わせ」に留まっていたキャラクターモーションは「AIが理解し、創造する動き」へ進化し、キャラクターが”より人間らしい存在”となって、プレイヤーの没入感を高めます。

ディープラーニングを経て知識を高めたAIが、プロシージャルアニメーションで「流れるような動作の連続」を行っていくという未来が見えてきました。これは非常に有望なAI開発参加の未来像と言えるでしょう。

ゲーム的な制限が無くなったキャラクターのモーションが見てみたいです。
NPCの自然な行動パターン

モーションがAI制御になれば、プレイヤーの振る舞いに応じてNPCが反応し、群集の自然な振る舞いや、バトル時の「敵キャラクターの戦術的な動き」などもリアルタイムで再現できます。
上記でAIが説明した事柄は主人公キャラクターだけではなく、ゲーム内に登場する全キャラクターに当てはまります。非人間のキャラであっても、「性格付け」を行うことで動作のバリエーションが膨大に増えるのです。

個人的に一番楽しみなのは、ゲームに登場するNPC全員が「異なる行動パターン」で動き回ることです。”予想外の出来事”が起きても「それらしいリアクション」を見せるようになれば、リアリティーは格段に増すでしょう。

従来のプログラミングされた行動規範を持つNPCは動作のバリエーションに乏しく、それが人間らしさを消していました。AI制御のNPCはこれらの課題を払拭して、リアリティー満点のキャラ造形に寄与できる可能性があります。

ビジュアルがリアル寄りのゲームで真価を発揮しそうですね。
AI制御キャラクターの課題
AIにキャラクター制御を任せると、開発者が想定していなかった言動や動きが生まれる可能性があります。AIはこの問題点を「ゲームバランスの崩壊」「不自然な動きやバグの発生」「倫理的・社会的問題」の3点で説明してくれました。

ゲームバランスの崩壊

AI制御のキャラクターが「予測できない行動」を取ることで、ゲームバランスが崩れるリスクがあります。
スムーズな動きで人間らしくアクションを行うキャラクターは魅力的ですが、無限大の動作パターンが生まれることは、不審な挙動に繋がりかねません。事前に「NG事項」を開発者サイドで設定する必要があるでしょう。

AIによると「戦いの場面」が含まれるゲームの場合、「敵キャラクターが異常に賢く、強くなってしまう」といった”プレイヤーに不利な状況”が起こる場合もあるそうなので、リリース前の徹底的なバランス調整は必須です。

そう考えると、従来の「プログラミングされた動きをするキャラクター」は遥かにコントロールしやすく、理に適った開発手法と言えます。AIは間違いなく開発に革新をもたらしますが、調整度合いが肝と言えるでしょう。

「何だこれは?」というプレイ展開が生まれるのはイヤですね。
不自然な動きなバグ

AIがリアルタイム制御中に「意外な選択」をすることで、キャラが不自然な行動を取ったり、意図しない挙動が発生したりすることがあります。
AIが一切介入していないゲームのプログラムでも「バグ」や「不具合」が起こることはありますが、自由度の高いAI制御を使う場合、こうした問題の発生率が「飛躍的に高まる」懸念があります。

例えばAIにNPC制御を任せた場合、付近に敵キャラクターが多く発生するエリアの住人は、「この場所は危ないから他へ逃げよう」と考え、ランダムにゲームマップの各地へと散らばってしまうかもしれません。

またクエストが存在するゲームでは、AIの意外な選択がNPCの行動に影響を与え、ゲームを進行不可にしてしまう可能性があるため、検証と調整は困難を極めそうです。ここでも”人間の介入”は必須と言えます。

テスト調整を延々と繰り返すと、開発期間も大きく伸びそうです。
倫理的・社会的な問題

AIに自律的な「セリフ」を生成させる場合、キャラクターが不適切な言動をするリスクも存在します。
モーションだけではなく、キャラクターの発言もAI制御に任せると、会話中に普通ではあり得ないセリフが飛び出す恐れがあります。これは主人公に限った話ではなく、NPC全般をAI制御にしても起こり得ることです。

AIの予測では、AI制御のキャラが「プレイヤーを不安にさせる」発言、つまり暴力的・差別的・攻撃的な言葉を使ってしまう可能性があるため、この部分にも開発者が十分に目を光らせておかなくてはなりません。

言動内容によっては、最悪「訴訟問題」に発展する可能性もあります。こうした悲劇を起こさないために、AIに「禁止事項」を徹底して事前学習させ、それを”絶対に守らせる”取り組みが求められるでしょう。

AI活用時には、ガイドラインの策定や制限事項の設定が必要になりますね。
まとめ
ゲームキャラクターの制御にAIを取り入れると、今までのモーションを遥かに上回る完成度を生み出せることが分かりました。ただし適切な事前設定作業を行わない場合、ゲームが破綻してしまうリスクもあります。

個人的には「人間とAIの共同作業をいかに徹底してゲーム開発へ取り入れていくか」が、AIキャラクター制御の未来を大きく左右するポイントだと感じます。AI参加の開発現場では”バランス取り”が重要になりそうです。

記事の後編では、実際にAIキャラクター制御を実現している有名なゲーム作品をご紹介しながら、現在「水面下」で起こっているかもしれない”AI参加型のゲーム開発競争”について、AI本人と一緒に考察していきます。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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