
「AIエージェント」とは何ですか?

「AIエージェント」とは、特定の目的を達成するために、自律的に行動するAIのことです。
ユーザーの指示で単純なタスクをこなしてくれるAIを「AIアシスタント」と呼びますが、「AIエージェント」はさらに進んだ人工知能を指す言葉で、物事を達成するために「自分で判断して行動できる」仕組みを持つ点が特徴です。

AIエージェントは、画像・文章の自動生成を含んだクリエイティブ分野や、スケジュールの管理、自動運転車両やドローンの自律操作、企業における顧客の問い合わせ対応など、実に幅広い分野で活躍できるポテンシャルを持ちます。
今回は、そんなAIエージェントの起源や利用例、OpenAIやNVIDIAが発表した最新関連技術などを取り上げながら、進化を遂げた未来の「AGIエージェント」が活躍していく可能性についても、AIと一緒に考えていきます。

それでは早速見ていきましょう!
AIエージェントの起源、その現在と未来
AIエージェントの起源と成り立ち

「AIエージェント」の概念は、AI研究の分野で以前から存在していました。
エキスパートシステム
1970年代、「エキスパートシステム」と呼ばれる仕組みが、AI研究の重要分野の一つとして注目されました。このシステムは、特定の専門知識や意思決定ルールを用いて問題を解決するために設計された構想です。

医療診断や鉱物の識別など、専門家レベルの判断を模倣するエキスパートシステムの構想は、現在のAIエージェントが特定のタスクを「自律的に実行する」概念に直接繋がるものとして、過去から現代に受け継がれている概念と言えます。
知的エージェント
AI研究の初期段階に「知的エージェント」という概念が提唱されました。これは人工知能が環境と対話しながら、与えられた目標を達成するために「自律的に考えて行動する」というソフトウェアエージェントの仕組みです。

1980年代から1990年代にかけて、知的エージェントの概念はAI研究の主要領域へと取り込まれていき、後のAIエージェント開発における基礎と指針を築きました。人間の指示を高度に理解して実行するAIの概念が生まれたのです。
知的エージェントは、環境の観察(知覚)・推論・行動決定・実行という四種類のプロセスを実行するものを指します。これは、現代のAIエージェントが持つ「自律性」や「環境適応能力」の原型と言えるでしょう。
AIエージェントの誕生
エキスパートシステムが「特定の知識領域」で優れたパフォーマンスを発揮するという特徴を持つ一方、知的エージェントの研究分野では、「より広範かつ自律的な行動」を行える方向性へ考え方がシフトしていきました。

こうした初期のエキスパートシステムや知的エージェントの理論とアイデアから派生し、さらに進化を遂げた存在が現在の「AIエージェント」で、機械学習、特に「深層学習(Deep Learning)」が、その誕生に寄与しています。
機械学習とディープラーニングについては、別記事に詳しく記していますので、AIの学習スタイルについて興味を持たれた方は、こちらの記事も併せてお読みいただくと、学習方法の違いについて理解が深まるはずです。

このような歴史を経て、「AIエージェント」の存在は現代に確立されていったのです。
AIエージェントの定義
エージェントAIは、知的エージェントの特徴でもあった「知覚(Perception)」「推論(Reasoning)」「計画(Planning)」「行動(Execution)」の四要素でタスクを実行するAIを指す言葉で、目標達成の手段を柔軟に編み出せる存在です。

AIアシスタントは主に人間の指示に従って動く存在ですが、AIエージェントはまず最初に「自分が置かれた状況」を観察しながら、広範な目的を達成するために「自ら判断して行動する」点で大きな違いがあります。
上司に言われたことだけを実行する社員がAIアシスタントであると例えるならば、AIエージェントはタスク全般を見渡して、様々な状況を判断しながら臨機応変に対応できる社員だと言うことができるでしょう。

AIエージェントは、仕事に対する姿勢がAIアシスタントとは決定的に違うのですね。
AIエージェントの活用例
スケジュールと健康管理
ユーザーのカレンダーやタスクリストを監視しながら、会議の予定や個々のタスクの「優先順位」を自動的に調整する機能は、AIエージェントが持つ仕組みを示す好事例です。つまり「自分だけのアシスタント」として活躍してくれます。

また、ウェアラブルデバイスやスマートフォンから得られる健康データ(心拍数・睡眠パターン・運動量)などをAIエージェントが読み取って分析しながら、異常な数値が発生した場合に警告を発してくれるのも活用事例と言えます。

日常生活の中でAIエージェントの存在を感じられる機会は多いですね。
チャットボット
ユーザーの入力(テキストや音声)から情報を読み取って理解し、その情報に基づいて適切な応答や解決策を考えて出力するチャットボットにも、AIエージェントの仕組みが活きています。

簡単なFAQから高度なサポートまで、さまざまなレベルのユーザーサポートを提供できる点が特徴で、複数のユーザーを同時に扱えるというメリットもあります。

チャットボットでのAIの活用は、エージェントAIの自律性、環境認識、問題解決能力が具体的に発揮される場面と言えます。
自動運転技術と自律ドローン
自動運転レベルが「3」以上の車両は、AIエージェントが持っている特性をフルに活用して、状況に合わせて柔軟に自律的な車両の運転を決定・実行できるよう設計されている点が大きな特徴で、ある意味「考える車」と言えます。

また、AIエージェント機能を有する「自律ドローン」は、建築物の点検作業や農業全般におけるモニタリング、災害現場の調査などで、人間が直接操作することなく自律的にタスクを遂行してくれるため、非常に便利です。

自分で判断しながら動く車両やドローンは、すでに世界で活躍しています。
OpenAIのAIエージェント「Operator」
先日OpenAIが発表した「Operator」は、ユーザーの代わりにタスクを実行することを目的に開発されたAIエージェントで、このエージェントはWebページ閲覧、タイピング、クリック、スクロールなどの操作を自動で行います。

「Operator」は、GPT-4oの視覚認識機能と強化学習を組み合わせた新モデル「Computer-Using Agent(CUA)」を基盤としているAIエージェントで、Webページを視覚的に理解しながら、適切な操作を自分で判断する点が特徴です。
現時点でこの「Operator」は、月額200ドルの「ChatGPT Pro」サブスクリプションサービスを利用しているアメリカのOpen AIユーザーに対して提供されています (一部利用不可の国もあり)。今後の展開に期待しましょう。

パソコンを自動操作してくれるAIエージェントは便利ですね。

ウェブタスク自動化を通じて、ユーザーの生産性向上に寄与することが期待されています。
NVIDIAのAIエージェント関連サービス
NVIDIAは、先日開催された「CES2025」において、新しい「NVIDIA AI Blueprint」を発表しました。この中には、高度な自然言語処理能力、状況認識能力、推論能力などを実現する有益なAIサービス群が含まれています。

NIM (NVIDIA Inference Microservices)
「NIM (NVIDIA Inference Microservices)」は、「AIモデルの推論」を効率的に行うために用意されているマイクロサービス群です。このサービスは、AIエージェントが実際に動作しながらタスクを実行するための基盤となります。

NIMには、大規模言語モデルの「Llama Nemotron」と、視覚言語モデルの「Cosmos Nemotron」を含む様々なAIモデルの推論サービスが含まれており、利用することでAIエージェントの強化に大きく貢献する仕組みです。
Llama Nemotron (LLM)
「Llama Nemotron」は、Metaのオープンソースモデルである「Llama」をベースに構築された大規模言語モデル(LLM)で、命令追跡、コーディング、数学演算などのAIエージェント機能に特化している点が特徴です。

LLMは顧客のサポート、不正の検出、製品サプライチェーンや在庫管理の最適化など、多岐にわたるアプリケーション向けに最適化されており、NVIDIA NeMoでユーザーがカスタマイズや最適化を行うことが可能となっています。

Llama Nemotronは、AIエージェントに「言語能力」と「タスクをこなす知能」を提供します。
Cosmos Nemotron (VLM)
「Cosmos Nemotron」は視覚言語モデル(VLM)のAIを指す言葉で、特に画像分析に優れており、自動運転車両の開発や、医療業務、倉庫業務、エンターテインメント分野など、視覚情報が重要な分野での応用が期待されています。

「Llama Nemotron」と「Cosmos Nemotron」は、Nano・Super・Ultraの3サイズで提供されているため、エッジデバイスからデータセンターの規模に至るまで、さまざまな利用者のニーズに対応している点が魅力です。

Cosmos Nemotronは、AIエージェントに「周囲の状況を視覚的に理解する能力」を提供します。
AIエージェントの進化に貢献するサービス
NVIDIA GPUに最適化されているNIMは、クラウド、データセンター、エッジデバイスで利用可能で、AIエージェントを様々な場所に展開し、多様なニーズに対応することを可能にします。

またNIMはマイクロサービスなので、既存のシステムやアプリケーションに容易に統合できます。これによって開発者は、AIエージェントを既存のワークフローにスムーズに組み込めるのです。

NVIDIA AI Blueprintが提供する一連のサービスは「AI技術の民主化」を推進し、AIエージェントの開発をより簡単に、管理しやすいものにします。

個人や小規模人数でのAIエージェント開発にも弾みをつける技術ですね。
未来のAIエージェント像
AGI実現が生み出す次世代のパートナー

AGI (Artificial General Intelligence)の開発が進めば、未来の世界で非常に有能なAIエージェントが現れる可能性が高いと思います。
人類と同等の知性を持つAIと言われるAGIが誕生すれば、現在の活用事例を超えて、医療分野や教育分野など、さまざまな領域で問題を高度に解決していく「AGIエージェント」が生まれる可能性があります。

また、ヒューマノイドにAGIを組み込めば、人間と対等に会話しながら、家事や介護、あるいは複雑な製造工程などのタスクを受け持つ「パートナー」と言える存在に昇格するかもしれません。
そのためには、AIの意思決定時の「責任の所在」や、AIによる雇用喪失といった合意、規制、倫理面の課題克服にも取り組まなければなりません。安心と安全を第一に考える姿勢が不可欠です。
AGIを生み出す計画は始まっている
2025年1月、アメリカ合衆国のトランプ大統領は「Stargate (スターゲート)」(外部リンク)プロジェクトを発表しました。これはAI技術の飛躍的な発展に関わる壮大な計画で、アメリカ国内だけで数十万人の雇用創出を目指す予定です。

スターゲート計画の初期出資者はソフトバンク、OpenAI、オラクル、MGXで、会長の座にはソフトバンクの孫正義氏が就任しており、計画にはAI開発者の夢である「AGIの構築」を目指すことも含まれています。
このプロジェクトの初期主要テクノロジーパートナーには、Arm、Microsoft、NVIDIA、Oracle、OpenAIがその名前を連ねており、プロジェクトに対する企業と国家の「本気度」が伝わってきます。今後注目すべき計画です。

AGIの開発進捗が非常に楽しみになってきましたね。
まとめ
ユーザーの利便性を高め、生産性の向上に寄与できる存在の「AIエージェント」は、現在AIを開発している研究機関や各企業、そして先進的な国家が最も力を入れているテクノロジーで、その進捗には世界の期待が高まっています。

「知覚」「推論」「計画」「行動」という四つの要素で与えられた仕事をこなすために考えて動くAIエージェントは、今後のAGI誕生に伴って、人間に伴走しながら高度なタスクを受け持つパートナーになれる可能性もあります。
こうした便利なAI機能を「個人レベル」でも生み出せる仕組みをNVIDIAが発表したことで、様々な場所から優れたAIエージェントモデルが生み出され、異なる分野で活躍していくだろうと私は期待しています。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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