世界的な人気を誇る対話型AI「ChatGPT」の開発元として知られるOpenAIのサム・アルトマンCEOは、NYタイムズ主催のイベントへ登壇した際、AGIについて「予想よりも早く実現するだろう」と発言しました。

「人類と同等の知性を持つAI」と言われているAGIは、生成AIや大規模言語モデル(LLMs)の急速な進化によって現実味を帯びてきた存在で、実現に向けた開発競争とその未来には、多くの期待が寄せられています。

今回は、AGIという用語の成り立ちやそのキーパーソン、AGIがもたらす可能性、実現時期とその課題、アメリカで始まったAGI関連のプロジェクト「スターゲート」についても考えながら、未来予想図を組み立てます。

AGIの成り立ちとその実現時期をAIと考察

AGIの成り立ちとキーパーソン

今回取り上げる「AGI」とは、「Artificial General Intelligence」の頭文字を取った言葉で、多彩な分野におけるタスクを「人間のようにこなす」高性能なAI(人工知能)のことを指しています。

AGIという用語の成り立ち

「AGI」という用語は、科学者・技術者・哲学者・メディア・企業など、多様な背景を持つ人々の活動とコミュニケーションを通じて徐々に形成されていき、その後一般化して使われた名称なのだと、AIは説明します。

「Artificial General Intelligence (AGI)」という具体的な用語が使われ出したのは2000年代に入ってからと、比較的最近のことで、単独タスク特化型のAIとは異なるAIを指すために用いられた、という経緯があります。

哲学・倫理・未来予測など、AIに関連する幅広い議論を行っていく中でAGIという言葉が人々の間で共通して用いられるようになり、それが今の一般的な用法と概念に落ち着いた、というのがAIの回答です。

AGIに繋がる重要人物

AI本人の解説によると、人工知能に関する研究の初期段階から「汎用的な知性」の必要性が人々の間で議論されていたそうです。私との会話の中でAIは、「AGIに繋がる重要人物」として2名の研究者の名前を挙げてくれました。

ジョン・マッカーシー

一人目は、「人工知能 (Artificial Intelligence)」という用語を1956年に初めて提唱したコンピュータ科学者のジョン・マッカーシーで、彼は「広範な知能」を持つシステムの構築を目指していたことで知られています。

1956年に開催された「ダートマス会議」で、マッカーシーはAIを「機械による知的な活動の科学」と定義しています。これが現在のAGIの領域に非常に近いものである、というのがAIの認識です。

アラン・チューリング

AGIに繋がる重要人物の二人目は、映画「イミテーション・ゲーム」でその半生が描かれたことでも有名な数学者のアラン・チューリングです。彼はドイツの暗号機「エニグマ」を解読したことでも知られる研究者でもあります。

1950年にチューリングが提案した「チューリング・テスト」は、「機械が人間のような知能を持つか」を判断するテスト方法として、後のAI研究者たちに影響を与えています。AGIを予見したような取り組みです。

人類の夢であったAGI誕生

AGIという用語が頻繁に使われるのは2000年代に突入してからですが、それ以前の1950年代には、AGIを予見させる発言や実験方法がすでに存在しており、AGIは「人類が長年追ってきた夢」であることが分かります。

1950年代にAGIの出現を予見した二名の重要人物はすでにこの世を去っていますが、それ以降も人工知能の大いなる可能性に賭けた科学者や研究者たちがそのバトンと精神を引き継ぎ、その流れが現在に至っているのだと思います。

AIが急速に進化を遂げながら普及している現在を見ると、近い将来我々はついに「AGIの誕生」を目にすることになるのかもしれません。もし実現したら、AGIは一体どんな変化を我々にもたらしてくれるのでしょうか？

AGIが生活・仕事・社会経済へもたらす変化を予測

生活面の変化

未来の世界、AGIが家庭内で働く「パーソナルアシスタント」という立場で存在する予測シナリオでは、家事や健康管理、教育補助、娯楽関連に至る全てのことを、1つのAGIが対応することが考えられます。

また、AGIが医療分野に進出する予測シナリオでは、患者の医療診断を瞬時に行いながら「最適な治療計画」を提案することが期待できるそうで、患者に寄り添った「個別化された医療サービス」の提供が生まれるそうです。

さらに、完全自動運転車両(レベル5)がAGIによって実現するという予測シナリオでは、高度なインフラ管理が実現し、交通事故の減少や交通渋滞の緩和、公共交通機関の効率化などが期待される、との回答でした。

仕事面の変化

仕事におけるAGIの未来を見てみましょう。ルーチン化された単純作業がAGIによって自動化される予測シナリオでは、AGI自体の管理者・倫理監視者といった人間の「新たな職種」が生まれる可能性があります。

また教育分野にAGIが進出する予測シナリオでは、人間の教師の役割がメンタリング(対話型の個別指導)やクリエイティブな教育方法の探求へ変わっていく可能性があるそうです。これも新たな職種と言えるかもしれません。

そして音楽、芸術、文芸などの創造活動にAGIが進出する予測シナリオでは、生み出す作品のアイデア生成といった「共同作業のパートナー」としてAGIが機能していく未来が予測されます。人間とAIの共同作業です。

社会経済への影響

AGIが社会経済に及ぼす影響を見てみましょう。AGIが多くの業務を処理することで、社会全体の生産性は飛躍的に向上しますが、同時に「労働力の再配置・再教育の必要性」も生じるため、ここが問題になりそうです。

また、AGIが「高付加価値の仕事」を創出していく一方、低スキルの仕事は徐々に減少していき、人間に「所得格差の拡大」が起こることが懸念されます。これは未来にかけて少し気になる部分と言えるかもしれません。

当サイトでは「AI産業革命」についても特集していますが、社会構造を一変するほどの発明が出回った時には、新たな職業が生まれる反面、消えていく既存の職業もあります。これは、AGIの台頭でも同じ結果になりそうです。

AGI実現に向けた実際の取り組み

アメリカの「スターゲート」計画

ドナルド・トランプ大統領が記者会見で発表して話題となった「Stargate (スターゲート)」(外部リンク)計画は、2025年以降にアメリカ合衆国で展開される「国家規模のAIインフラ整備プロジェクト」です。

スターゲート・プロジェクトは、世界のAI分野におけるアメリカの主導権確立、再産業化、国家安全保障の強化、そして次世代の汎用人工知能であるAGIの実現を目指す取り組みとして位置づけられています。

この計画には、今後4年間で総額5000億ドル(約78兆円相当)の投資が計画され、初期フェーズでは1000億ドル(約15兆6000億円)の資金投入を予定。数十万人規模の雇用創出を生み出す予定です。

スターゲート計画に関わる企業と人間

スターゲート・プロジェクトには、孫正義CEOが「財務管理の主要担当」として会長を務める形でソフトバンクグループが参加しており、OpenAIがAGI開発の最前線としての役割を果たします。

計画の初期出資者はソフトバンクグループ、OpenAI、Oracle、MGXで、ソフトバンクグループとOpenAIの二社がリードパートナーとして活動。ソフトバンクは財務管理を、OpenAIが運営を担うスタイルです。

初期の主要技術パートナーとして発表されたのはマイクロソフト、NVIDIA、ARM、Oracleで、データセンター運用や大規模分散処理技術の提供により、計画の技術的実現性を支えることになります。

プロジェクトに関連するインフラ整備は、テキサス州を皮切りに、全米各地に大型データセンターや関連施設を建設する形で進められ、これによってAIモデルの大規模なトレーニングや運用が可能になる見込みです。

AGIをどこよりも早く実現した国家は、今後の世界情勢で大きなアドバンテージを握ることになるため、合衆国政府と先進的なテック企業が緊密に連携していくこの壮大な計画は、絶大なインパクトを持つことになるでしょう。

AGIの誕生時期を予測

AIが考えるAGIの誕生時期

AGIの誕生時期については、専門家の間でも意見が分かれるところです。2030年代前半までに実現するという意見もあれば、21世紀中に実現する保証はない、とする向きもあり、その年数には大きな開きがあります。

2030年前後に、「人類と同等の汎用知能」とは言えないものの、特定の分野で「非常に高い柔軟性」を発揮するAIが実用化されていくだろう、というのが、AIが考える「初期AGIの誕生時期」予想です。

そして、技術的進歩だけでなく、倫理的・法的・社会的な準備もこのタイミングに揃う可能性が高いという理由で、2040年以降に「完全なAGI」が実現するであろうと、AIは続けて未来予測を立てました。

サム・アルトマンCEOが考えるAGIの誕生時期

OpenAIのサム・アルトマンCEOは、自身のブログ(外部リンク)で「おそらく10年後には、地球上の誰もが、今日最も影響力のある人物が達成できる以上のことを達成できるようになるでしょう」と記述しています。

またアルトマン氏は、「2035年には誰もが、2025年の全人類と同等の知的能力を結集できる」というAGIを匂わせる趣旨の記述もしています。これは、上記でAIが予見したAGIの誕生時期とほぼ合致している形です。

スターゲート計画の中心を担うOpenAIのCEOのこうした発言も加味しながら考えると、アメリカ合衆国は今後10年でAGIをある程度の形にまで作り上げ、世界に公開していく計画があるのだろうと思います。

核融合研究企業「Helion Energy」との関連性について

サム・アルトマンCEOが会長に就任し、資金調達も主導した核融合研究の企業「Helion Energy」(外部リンク)は、2028年までにマイクロソフトへ「核融合電力」を供給する計画を掲げ、現在研究と施設建造を進めています。

AGIの訓練と運用には、かなり膨大なエネルギー源が必要とされるため、2035年までにAGIが実現するのであれば、その時点で「十分なエネルギー供給」が確保できる状況になくてはなりません。

こう考えると、Helion Energyが「AGIへの電力供給も見据えて施設を建造している」という仮説も成り立つと思います。核融合は、AGIの長期的な運用を支える持続可能なエネルギー源として理想的です。

核融合と原子力発電の違い

「核融合(Nuclear Fusion)」と「原子力発電(Nuclear Fission)」は、どちらもエネルギーを生み出すための原子力技術ですが、その原理とプロセス、利点と課題は、それぞれの技術において大きく異なっています。

核融合は「原子核の結合」でエネルギーを生成し、原子力発電の核分裂では「原子核の分裂」でエネルギーを生成します。核融合発電は放射性廃棄物をほとんど生成せず、廃棄物も短時間で無害化する点が魅力です。

ただし、核融合を制御して持続的にエネルギーを生み出すためには、「非常に高い温度と圧力」を維持する必要があるため、技術的困難と挑戦を伴います。さらに装置そのものが非常に高価なため、多額の投資が必要です。

2035年〜2040年がAGIの誕生時期か

アメリカ合衆国が発表したスターゲート計画、その中心としてAGI開発に邁進していくOpenAIのCEOサム・アルトマン氏の発言をAIの未来予測と照らし合わせると、AGIが誕生するおおよその時期を予想できます。

またアルトマンCEOが見学にも訪れたHelion Energyの核融合施設は、2028年までの稼働と電力供給を目標としているため、こうした状況証拠からも、早くて2035年にはAGIが生まれると考えられそうです。

AIは完全な状態のAGIが普及していく時期は2040年と回答していますが、膨大な電力をどのように賄うのかは大きな課題なので、今後のインフラ整備とAGIの普及は切っても切れない関係になることでしょう。

まとめ

AGI誕生が「人間性の再評価」のきっかけに

AIは私とAGIについて会話を進めた最後に、「AGIが人間が行う仕事の一部を肩代わりすることで、人々は自分たちの人間性や価値を再評価する機会を得られる」と明言しました。これは一体どういうことでしょうか？

哲学的な思考や芸術などは、AIでは代わりが効かない人間だけの特化領域です。また、AIが完全には理解できない感情表現も人間の強みで、AGIの誕生後、人間はその分野を深く探究できるようになるとのことです。

AIが進化すると仕事が無くなる、という概念は一部分当たっていますが、「人間らしい活動」を継続して進化させることが、「AIと人間の共存」をより良い形で輝かせていく鍵になっていくのは間違いありません。

私にはこうした未来の人間像がハッキリ見えているわけではありませんが、AIがここで伝えようとしていることは、何となく想像がつきます。あなたは未来のAGIと、どのように向き合いたいですか？