記事の前編では、自動運転車両の芽生えと技術発展の歴史、各年代における企業や研究者の取り組み、そして商用化への発展と社会貢献について、AIと一緒に考察を進めていきました。今回は2025年から先の「未来」がテーマです。

自動運転車両には、世界の企業や規制当局が参照する「自動運転レベル」が、0から5までの「6段階」で設けられています。この中でレベル4は、気象や路面状態などの「条件付き」で自動運転を実現する段階を指すものです。

現在、自動運転レベル4の車両は世界の一部地域で商用利用されており、今後は一般向け車両にもレベル4以上の自動運転レベルが備わっていくことが期待されています。AIは自動運転車両の未来を、どう予測するのでしょうか？

自動運転車両の未来をAIと一緒に予測・2025年から2050年のタイムライン

自動運転車両の未来予測 (2025年〜2050年)

未来予測：2025年〜2030年 (レベル4商用サービスの拡大)

現在は、WaymoやPony.aiのような自動運転特化型の企業が、各都市の一部区域で無人のロボットタクシーを本格運用しています。そして日本でも、地方を中心にレベル4の自動運転サービスや移動支援が始まっている状況です。

AIの予測は現在の発展状況を踏まえたもので、確かにここ日本でも自動運転車両の普及は高まっていくと思われます。都市部ではロボットタクシーを、地方では無人バスを利用する機会が大幅に増えるかもしれません。

一方、現在一般家庭向け車両の自動運転機能は限定的で、高速道路での走行アシストや駐車支援といった「条件付き自動運転(レベル3)」が中心です。AIはこの時期、自家用車より公共交通機関の自動化が最も進化するだろうと予測します。

公共交通機関の車両で自動運転技術が先行しているのは、自家用車のように「不特定なエリア」を走行することが少ないためと推察されます。多様な条件下における自動運転技術の発展には、まだ時間がかかるはずです。

ただこの時期、ユーザーの間では「自家用車にも高度な自動運転機能を」という期待が高まり、アプリから自分の車を呼び出して任意の場所に来てもらう、といった「次世代のニーズ」が徐々に議論され始める可能性もあります。

未来予測：2030年〜2035年 (レベル4の限定的な一般普及)

待望されていた「自家用車のレベル4実装」は、先行していたロボットタクシーや無人バスなどの運用実績を元に、「次世代交通インフラが整っている地域」を対象として実現する可能性があると、AIは予測を立てます。

AIによれば、特定の住宅街から最寄り駅・病院・商業施設を結ぶ「生活圏内」だけでレベル4機能を限定的に利用できる自家用車が登場し、「日常生活における車の利用スタイル」を大いに変化させる可能性があるそうです。

自家用車を自由に呼び出せる未来

例えば、この時期に登場するレベル4認定の自家用車を持っていれば、通勤時に最寄り駅まで自分で運転した後、車に命令を出して「車だけ自宅の車庫へ帰宅させる」使い方もできます。これは画期的な利用スタイルですね。

また、車に乗らずに近所のスーパーやお店で買い物をした際、レベル4の自家用車を呼び出し、荷物を入れてそのまま一緒に帰宅する、といった「お買い物アシスト」的な利用方法も現実味を帯びてくるはずです。

ただし、高度な自動運転機能を持つ自家用車は販売価格が高くなる恐れがあります。センサーにLiDARを搭載している車両は特にその傾向が強くなるため、最初は富裕層に向けた限定的なオプションになるかもしれません。

テスラ(Tesla)は一貫して「LiDAR不要論」を主張している企業で、カメラセンサーとAIだけで高度な自動運転が実現すると言っています。この時期にテスラが一般向けにレベル4以上の車両を提供できるかも注目ポイントです。

AIはこの時期の予測で、日本では高齢者ドライバー問題を踏まえた法改正が進み、特定条件下で自家用レベル4車両を購入する際に「補助金」が出る可能性も示唆しています。つまり、高齢者の運転をAIへ置き換える流れの芽生えです。

未来予測：2035年〜2040年 (インフラの整備が加速)

自動運転車両の普及は、都市開発と密接な関係にあります。当サイトではAIの進化によって実現するスマートシティの未来像に関する記事も掲載していますが、次世代の都市構想の中でこそ、自動運転車両は輝きを増すはずです。

現在でも、インフラとデジタル交通網の連携が進んだ先進的な都市では、地図情報・交通信号・周囲の状況がリアルタイムでクラウド共有され、AIによる管理体制が実現しつつあります。この時期は「インフラとの連携」がカギです。

AIはこの時期の予測で、一部のモデル都市で「完全自動運転に近い自動運転車両」が個人向けに試験導入され、実証実験を行なっていく可能性があることも示唆しています。レベル5の達成へ向かう黎明期になるかもしれません。

一方でAIは、地方には「インフラ格差」が残っているため、レベル4以上の自動運転車両が全国的な普及を見せるためには、さらなる時間が必要だと解析しました。下地が整わないまま技術だけが先行するのは、確かに危険です。

自動運転車両の普及が先か、それとも次世代交通網のインフラ整備が先かという問題は、企業を超えて「国家事業レベル」の話になってくるため、世界各国で実現への「温度差」が生まれてくることは想像に難くありません。

長期的な視野を持ちながら都市の「スマートシティ化」を進め、その中に自動運転技術をどう収めていくか、という包括的な開発視点が求められるのがこの時期で、一定の成果を上げる国家や地域も出てくるはずです。

未来予測：2040年〜2045年 (商用サービスの最大化)

自動運転分野に「大きな変換点」が訪れるのがこの時期です。都心部・郊外・地方を問わず、商用モビリティサービスが日常的に「レベル4・一部レベル5」で展開していく時代が本格到来する、とAIは未来予測を立てました。

AIの発言の裏側には、この時期に自動運転技術が成熟して、AIの自己学習と安全制御、周辺環境のリアルタイム反映が高度に自律化され、「信頼感を高める自動運転技術」が誕生しているだろうという予測が含まれています。

日本で考えると、これまで都市部限定だったロボットタクシーサービスが全国エリアに拡大し、また一部の地方で運用されていた自動運転移動サービスも増え、過疎地でも何不自由なく移動できる未来が実現していることでしょう。

現在経済産業省と国土交通省が展開している「持続可能なモビリティ社会」を目指す国家プロジェクト「RoAD to the L4プロジェクト」(外部リンク)が順当に進めば、こうした未来を生み出す可能性も大いにあり得ます。

無論、この年代までに自動運転車両最大の課題であるインフラ・安全性・倫理面の課題もある程度解決していることが条件となり、自家用車では依然としてレベル4以上の普及は限定的でしょうが、夢のある未来像です。

個人的には、日本の企業がどこまで自社の商用サービスを展開できるかが気になるところです。日本のモビリティ企業がAI研究と上手く連携し、異分野同士で協業できる仕組みが整えば、この未来は十分実現可能だと思います。

経済面で考えると、海外、特にアメリカと中国で先行している自動運転車両技術の輸入に頼り続けることは、日本にとって「真の経済成長」に結びつきません。「日本生まれの自動運転サービス誕生」に期待したいです。

未来予測：2045年〜2050年 (世界規模で商用化と一般化が加速)

この時期になると、ロボットタクシー・シャトル・物流車両など、レベル4の商用モビリティサービスが先進国の都市部で「標準」となり、新興国でも主要都市に広がる動きを見せるだろう、というのがAIの未来予測です。

そしてついに、レベル4の家庭用車両はこの時期から本格的な普及を世界で開始しますが、依然としてレベル5の一般車両は「プレミアム市場向け」の製品で、コストと法的な規制から、その普及は限定的になると思われます。

AIは回答の中で、自動運転車両が「家族のような存在」になるという予測も行なっています。アプリで制御するのではなく、対話型AIのように「話しかけて使う」モビリティの新たな未来がやって来るのかもしれません。

またこの時代は、自動運転車両による「人間不在のレース大会」が様々な国で行われても不思議ではありません。車両を販売する企業にとっては「技術力」をアピールできる場になるため、参戦企業と研究者も増えていくはずです。

世界主要国の未来予測 (アメリカ・中国・ヨーロッパ・日本)

アメリカではロボットタクシーが全米50都市以上に拡大。サンフランシスコやフェニックスでは、モビリティ市場の60％が自動運転になります。その一方、レベル5は新たなスマートシティにおける試験運用に留まりそうです。

中国ではBaiduやPony.aiがレベル4商用サービスを100都市以上に展開。深圳や杭州ではレベル5のサービスも始まり、公共交通の40％を自動運転が占めることに。低コスト戦略で新興国への技術輸出を加速する流れも起きるでしょう。

ヨーロッパ諸国では、BMWやボルボがレベル4一般車両を都市部で展開。オランダやドイツのスマートシティでレベル5の実証実験が進みます。ただEUの厳格な規制から、レベル5の商用化は2050年以降にずれ込むかもしれません。

日本では、トヨタやティアフォーがレベル4ロボットタクシーの提供を開始。過疎地での移動サービスも増加し、レベル5の商用車両が特定エリアで試験運用を始めます。日本製のレベル4自動運転車両が大幅に数を増やしそうです。

なお、この時期の日本では運転免許制度の見直しが議論され、「人が運転することの再定義」が話題になるという予測も出ました。条件付きながら、自動運転車両を「実技試験不要」で購入できる可能性もあるでしょう。

この予測は、高度な自動運転車両は人間の介在を必要としなくなるため、特定の人が「車に運転してもらう」ライフスタイルを選択することを示しています。未来でAIを「優秀なお抱え運転手」にできるのでしょうか？

安全な自動運転車両の未来を実現するために

法整備と試験運用

詳細は記事の前編をご覧いただきたいのですが、2023年のGM Cruiseの事故は「ひき逃げドライバーの初期行動」と「自動運転システムの誤判断」に起因しますが、自動運転車両側の「運転責任の所在」に明確な判断が下されていません。

GM Cruiseの企業責任(特に情報開示の不備)は当局から厳しく指摘され、罰金や許可停止などの措置が取られましたが、自動運転車の法的責任の枠組みは未成熟なので、責任の最終的な帰属は今後の調査や法整備に委ねられています。

今後、完全自動運転車両が交通事故を引き起こした場合、運転責任の所在はどこにあるのか、という問題にも向き合っていかなければ、安全な自動運転の未来は見えてきません。この分野における早急な法整備が望まれます。

完全自動運転が普及していく過渡期には、手動運転車両と自動運転車両の間で「予測不能な重大事故」が発生する可能性があることは、現実に証明されています。試験運用時には「様々なケース」を想定することが非常に大切です。

後編まとめ

今回はAIに「五年毎の未来予測」を立ててもらいながら、自動運転車両の成長と普及のタイムラインを考察しました。これを見る限り、現時点でどの企業も実現していないレベル5の社会実装には「相当な年数」を要するはずです。

人々が次世代のサービスや体験を得られる「完全自動運転社会」を実現するためには、「スマートシティ構想」を同時に展開させることが不可欠で、着実な段階を経ながら実現に向かって前進することも重要だと感じました。

自動運転車両が事故を起こした際の責任所在に関しては、国際基準の法整備も求められそうです。また、悪意ある第三者によってハッキングされるリスクを軽減させる「予防措置や対抗策」も重要な課題になってくるでしょう。

レベル4以上の完全自動運転車両が社会の隅々にまで広がり、これまでとは全く異なる「次世代モビリティの進化」を人々が体感するには時間がかかりそうですが、主要各国では現在取り組みと実証実験が積極的に行われています。

AIの未来予測は全くの絵空事ではなく、自動運転車両開発の歴史と現状を踏まえたものであるため、今回考察した未来が実現する可能性は非常に高いと思います。あなたは自動運転車両の未来をどのように想像しますか？