NVIDIAの創業者ジェンスン・フアンCEOは、2024年11月に日本で開催された基調講演「AI Summit Japan」(外部リンク)の中で、AI技術の躍進を「産業革命」に例えました。「AI産業革命」というのは、非常にインパクトを持つ言葉です。

この基調講演の中で「すべての業界、すべての企業、すべての国が”新たな産業革命”を起こす必要がある」と力強く語ったフアンCEOは、さらに「AIが(現代の)産業革命のきっかけになる」とキッパリ断言しています。

AI産業分野においてグローバルリーダーの地位を築いているNVIDIAのCEOが予言する「AI産業革命」は、私たちの生活にどのような変化をもたらすのでしょうか？今回はこの”AI産業革命”をテーマに据えて、AIと一緒に考察していきます。

「AI産業革命」で変わること、革命後の未来について、AIと対話しながら考察

AI産業革命の始まりと社会の変化

AI産業革命は「すでに始まっている」

AIは「すでにAI産業革命は始まっている」と断言します。この発言の元となっているのは、ChatGPTに代表される対話型AIや自動生成技術、AI PCやApple Intelligence、そしてアメリカと中国が牽引するAIロボット開発などです。

Microsoft、Intel、GoogleなどのIT企業大手は、AI機能とデバイスの融合にシフトしています。今はAppleもAIに対して意欲的です。今後はタスクを自律的に実行できるAIエージェントの普及も、加速度を増していくことが期待されています。

現在のAI技術は、日常生活から仕事に至るまでを広範にカバーするもので、その構造は従来の社会構造を一変させるパワーを秘めます。この「新技術の発明と浸透」には、18世紀〜19世紀の産業革命時代と重なる部分があると言えるでしょう。

AI産業革命で変わること

AIの進化は、世界で広がる「デジタル格差」を埋めることにも繋がるだろうとAIは言います。パソコンやプログラミングなどの専門知識を持たない人が置いていかれない世界。これもAI産業革命で変わる部分だそうです。

AIはまた、企業運営の一部分が「高度なAI」によって支えられるようになり、仕事の効率化と生産性向上が今まで以上に進むだろうと予測します。これからはAIを上手く使いこなせる企業が、成長スピードを早めていきそうです。

18〜19世紀に起こった産業革命では、既存の職業が消えていく流れが起こりました。AIはこれと類似する現象が「AI産業革命」でも起こり得ることを予測しており、実際そうなりつつある分野も出始めています。

AIは人間から仕事を奪わない

AI産業革命で大事なポイントは、「AIが人間から仕事を奪うのではない」ということです。これはフアンCEOも公式にハッキリと明言している部分で、AIもこの発言を支持しています。では、一体誰が人間から仕事を奪うのでしょうか？

人間から仕事を奪うのは”人間”です。AIはあくまでもツールであり、それを私たち人間たちが「どのように取り入れて使いこなすか」が未来を決めます。そしてその判断は、常に人間にしかできないことなのです。

確かに単純作業や労働はAIに置き換わっていく公算が大きく、その部分で人間の職種が消える可能性はあります。ただしAI産業革命は、AIを管理する新たな職種を生み出すことも考えられるため、一概に”AIが仕事を奪う”とは言えません。

ロボティクスAI分野の産業革命

ジェンスン・フアンCEOは、前述の基調講演でAIを「デジタル」と「フィジカル」に分け、後者を「ロボティクスAI」と呼びました。そして、ロボティクスAIの産業革命は「日本が最も相応しいだろう」とも述べています。

少子高齢化が深刻になっている日本では、労働力の代替としてのロボットやヒューマノイドが展開する余地があると思われます。実際、農業分野ではAIロボットを取り入れた収穫の手伝いも実現しており、現実味があります。

現在、海外のスタートアップ企業や研究機関がロボティクスAI分野で実現を目指しているのは「労働力の代替」で、工場や倉庫内の単純作業を「人間からロボットへ置換する取り組み」は、急ピッチで進められているのです。

新たな「自動化と効率化」の流れ

かつての産業革命では、蒸気機関や機械織機のような技術が労働のプロセスを効率化し、生産力を飛躍的に向上させました。そして同じような流れが今、AIの劇的な進化と多彩な分野への浸透によって起ころうとしています。

AIを用いれば、単純作業の自動化や、データ分析・意思決定支援を効率的に行えます。AIが翻訳・物流・医療診断・クリエイティブ分野で人間の負担を減らし、生産性と仕事のスピードを上げているのはその証拠です。

つまり、今後AI機能の進化やロボティクス分野の発展が人類にもたらす恩恵は、自動化と効率化を「次世代レベル」で実現することであり、それこそが「AI産業革命」が実現する「大きな変革」なのでしょう。

AI産業革命後の未来予測

「AI民主化」の始まり

AI産業革命が広がった結果、私たちの未来はどうなるのでしょうか？AIはその未来を「AI民主化」という言葉で説明しました。AI民主化とは、専門知識や高価な設備を必要とせず、誰もがAIの恩恵を受けられる状態を指す言葉です。

AIと高度に密接したシステムが生まれることで、中小企業や個人がAIを活用して大企業と対等に競争できる時代が到来し、発展途上国や地方都市でもAI技術の普及が進んでデジタル格差は縮小する、とAIは考えています。

さらに、AIリアルタイム翻訳機能が進化・普及することで、世界の人々とコミュニケーションが円滑に行えるようになり、その結果国境を越えた共同作業が活発化するだろうとAIは予測します。実現が楽しみな未来です。

まとめ

すでに序章がスタートしている「AI産業革命」は、今後のAIの進化やロボティクス産業の発展に伴って、加速度的に現実味を帯びてくるでしょう。既存の職業がAIに置き換わる、またはAIに関する”新たな職業”が生まれる可能性もあります。

AIを「人間を置き換えるもの」として考えるのではなく、「人間を補完するもの」として活用することが大切になっていくと、AI本人は私に語ってくれました。これは非常に重要で、今後も忘れてはいけないことだと思います。

社会構造や暮らし、働き方にも影響を与えるAIの進化と向き合うとき、人間が「正しい使い道」を考えていくことが最も大切になるはずです。AIと人間が共同で産業革命を起こしていく未来は、すぐにやって来るでしょう。