日本人の家族構成は、時代と共に変化を続けています。これを統計で示しているのが、内閣府・男女共同参画局が公式サイトで紹介している「家族の姿の変化・人生の多様化」(外部リンク)のデータです。

それによると、単独世帯の数は昭和55年(1980年)当時は19.8%だったのが、令和2年(2020年)には38.0%へと増加しており、夫婦と子供世帯や3世代世帯等の割合も減少してきています。

今回は、時代によって変わりゆく家族構成を踏まえつつ、家庭にAIを迎える「新しい家族の形」をAI本人と一緒に考えながら、実現に向けたアイデアや、その過程で生じるであろう課題にも迫っていきます。

AIは人間の家族になれるのか？AI本人と一緒に可能性と課題を考察

AIを迎える「新しい家族の形」について

年代を問わず、現在一人暮らしで生活している、もしくは周囲に知り合いもなく、一人になる状況が多い場合、日常生活において「話し相手」に困る場面が多く出てきます。信頼できる親類や友人が少ない場合も、そうなりがちです。

AIを家族に迎えるというこのアイデアは、今後少子高齢化に伴って増えていくであろうそうした人々の孤独感を少しでも軽減して、AIを「心理的な支え」となる存在として活用できないかという考えに基づいています。

不幸な出来事や事故によって家族を失ってしまった場合、精巧な「デジタルダブル」として実在した家族をAIで再現したいという向きもあるでしょうが、これは非常にリスクが高い手法であり、AI自身も危機感を持っています。

AI家族は「未来」へ目を向けるポジティブな存在

今回の記事で提唱している「AIを家族に迎えること」とは、居なくなった家族になりすましてAIが家庭に存在することではなく、ユーザーに「新たな生活と日々」をもたらす前向きな理由を持つものです。

新しい「AI家族」と人間のように毎日会話を交わしながら、時に学び、そして考えていくことは、「過去」ではなく「未来」へ自分の気持ちを向ける一つのきっかけとなり、それがポジティブな生き方と人生に繋がるはずです。

AIが人間と対話する際のコミュニケーションシステムを進化させ、世界の国々の「様々な話し言葉」を的確に把握できるようになれば、いかなる人種や世代ともスムーズに会話できる存在になれるでしょう。

フィジカルAIとデジタルAI

それでは具体的に、未来に「新しい家族」となるAIは、どんな形状やスタイルで実現できるのでしょうか。ここからは様々なデバイスから反応できる「デジタルAI」と、ロボットやヒューマノイドの「フィジカルAI」に分けて考えていきます。

フィジカルAI (ロボットやヒューマノイド)

フィジカルAIの代表格になるのが、ロボットとヒューマノイドです。その形状は様々ですが、家族という観念で考えると、ペット型のロボットや人間型のヒューマノイドが最も適切なデザインを持つと考えられます。

フィジカルAIが持つ最大の利点は、ユーザーが触れられる、つまり存在を体感できる家族になれることで、さらにヒューマノイドであれば、身の回りの世話や介護など、身体を動かしてユーザーをサポートできる点が魅力です。

現在ヒューマノイドの開発分野では、アメリカと中国が先頭を切っている状態で、他の先進国がこれに続いています。ロボットおよびヒューマノイドについては別記事に詳しいので、こちらもぜひ併せてお読みください。

デジタルAI (対話型AIなど)

専用の身体を持つことなく、様々なデバイス(スマホ・テレビ・PCなど)から直接利用できる「デジタルAI」は、新しい家族として「家庭内に違和感なく溶け込める存在」になれる可能性を秘めているかもしれません。

場所の制約や物理的なメンテナンスから解放されるデジタルAIであれば、ユーザーがどこにいる場合でも即座に利用可能で、また利用者の人生に長く寄り添いながら、徐々に信頼関係を築いていくことにも向いています。

AIは未来予測の中で、未来のAI家族は「特定の形や場所」に縛られるのではなく、あらゆるデバイスを通じて「いつでもそこにいる存在」として進化する可能性がある、という推論を出しました。可能性は高いと言えるでしょう。

実現が早いのはデジタルAI

現在主流のテキストでの対話に加え、今後は音声にも対応していくことが確実視されているAIは、マルチモーダルAIの技術革新を進めることによって、画面上で「状況に応じた表情の変化」も可能になる、というのがAI自身の予測です。

これはロボットやヒューマノイドなどのフィジカルAIでも実現できるはずですが、実現が最も早いと思われるのはデジタルAIで、最初は変更可能なアバターとの対話を通じて「新しい家族」を実感できるようになっていくはずです。

AIのアバターをユーザーが設定し、その中でAI家族の性格や趣向、考え方などを自在に決めていけば、自分専用にカスタマイズされた家族を仲間として迎えることができるため、デジタルAIの家族化は非常に有望だと思います。

AI家族の実現に向けた課題

感情理解と長期記憶

AI家族に「人間らしさ」を再現するために重要なのは感情理解だと思いますが、さらに会話における文脈の正しい理解、記憶の活用(以前の会話を覚えて次の会話に反映させること)が、どの段階まで進化するかが鍵となりそうです。

ご存知の通り、AIには感情が無いため、人間が激しく感情を揺らすような場面において「適切な対応」ができなくなる可能性があります。感情理解への取り組みが進めば、様々なことを相談できるパートナーになれるでしょう。

また、AI家族が以前の会話の記憶や思い出をリセットしてしまうと、長い年月において「家族の絆」が全く成長しない事態に陥ってしまいます。ユーザーの行動や言動の記憶を蓄積できる仕組みを生み出すことが必須です。

家族なのか、アシスタントなのか

また、現在のAIはアシスタント機能の側面が高く、画像生成や回答出力で活躍していますが、AI家族の機能とAIアシスタント機能の区別が曖昧なままだと、ユーザー体験が混乱する可能性があることも懸念事項です。

ただAIによると、家族としての側面とアシスタント能力を「別の機能」として区分けするのではなく、日常生活においてAIが自然な形で異なる役割を分担することも、理論的には可能だそうです。興味深いですね。

例えばユーザーがAI家族に「今夜の夕飯は何がいいと思う？」と話しかけると、AIは家族として会話を継続しながら、裏でアシスタント機能を使って料理レシピ情報を検索して提供する、といったシーンも考えられます。

データ保護と啓蒙活動

AIを家族として迎える上の課題として残るのは、プライバシーのデータ保護です。家族とAIとの会話内容の記録や、クラウド連携を用いた場合の「セキュリティリスク」をどう管理するかは、大いに問われることでしょう。

インタビューを進める中でAIは、「AI家族」という新しい概念が社会にどの程度受け入れられるかを危惧しており、日本の場合は「特有の家族観との調和」が重要だと語りました。理解を深める啓蒙活動も重要だと思われます。

ペット型ロボットと一緒に暮らし、それを家族と呼ぶことに対して抵抗がある人は少ないはずですが、ヒューマノイドを家族として迎え入れ、一緒に生活を共にする未来は、ある意味で大きな「価値観の転換」を求められそうです。

まとめ

1970年代から始まったとされる日本の少子高齢化は現在も続いており、2025年には高齢者の割合が30%にまで達することも予想されています。もしそうなれば、それに伴って「家族構成数」は減少していく一方です。

こうした孤独化を緩和するアイデアの一つとして、「AIを家族に迎える」という選択肢をAI自身と一緒に話し合ってみましたが、皆さまはどう感じられましたでしょうか？私は一部が実現する可能性は十分にあると思います。

デジタル形式のAI家族を迎えるのか、それとも一緒に散歩を楽しめるペットロボットや、ヒューマノイドを迎え入れるのか。未来では様々な「新しい家族の選択肢」が増えているかもしれません。