前編では、今もどこかで消滅しつつある「日本の伝統的な職人技」の保存と伝承について、AIと一緒に考察をしてきました。職人技の担い手が少なくなっている現状は深刻であり、これからの日本文化に影響を与えそうです。

後編となる今回は、日本の宝とも言える職人技の数々を後世へ残すべく、AIロボットの能力を活用して保存する「次世代の後継者」の取り組みについて、AI自身と一緒に考察しながら未来予測を深堀りしていきます。

職人の技術を伝承するためには、単にノウハウや作業の順番を文書化するだけでは不完全なことが、前回の考察で分かりました。この問題をクリアできるのは、進化したAI機能を頭脳に持つ「実習型AIロボット」になるはずです。

実習型AIロボットが職人技を習得していく未来の可能性をAIと一緒に考察

実習型AIロボットが職人技を引き継ぐ未来

実習型AIロボットについて

「実習型AIロボット」という呼称は、私が記事を書く上で思いついた言葉です。具体的なイメージは、マルチモーダルAIを搭載するヒューマノイドで、視覚・聴覚・触覚・嗅覚のセンサー搭載を想定しています。

現在アメリカと中国を中心にロボットとヒューマノイドの開発競争が加速していますが、こうした「人間のパートナー」としてのAIロボットやヒューマノイドの進化系と呼べる存在が、「職人の弟子」になるイメージです。

AIは私との対話中、実習型AIロボットが職人の生活や作業を常に観察し、時に質問を投げかけながら、多層にわたる技術を学んでいく仕組みが最も理想的だと言いました。人間の弟子とまったく変わらない光景ですね。

ロボティクスAIの利点

AIによると、聴覚と視力、そして圧力・温度センサーを備えた実習型AIロボットが人間の職人と仕事場で一緒に並びながら、手先の感覚や動作を直接学習していくことで、職人が体得してきた感覚に近いレベルで技術理解が進むそうです。

こうした「体験型の職人技会得」は、言葉や映像だけでは伝えきれない「微妙な感触や感覚」を最大限に学習できる点がポイントで、様々な状況下の作業を体験していくことで、ロボットは「より深い理解」を示せると思います。

そして実際に手を動かしながら口頭で教えていくほうが、人間の職人さんも説明しやすいと思います。技を伝える対象が人間からAIロボットへ変わるだけなので、「師弟関係」の雰囲気を保てる点も魅力ですね。

実習型AIロボットを実現するための課題

AIロボットへの理解

人間が実習型AIロボットを「文化継承の手段」として受け入れていく未来では、何よりAIと人間の信頼関係と倫理的な枠組みを確立させていくことが重要になります。開発企業と関連する省庁の連携も必要でしょう。

こうした文化保存のスタイルは今までに前例が無いため、検証段階でも異論が出ることは間違いありませんが、当事者が居なくなると途絶える可能性がある無形文化財の保存という観点で考えれば、意義はあるはずです。

職人さんやその家族、組合関係者との丁寧な交渉も不可欠です。職人技を後世で誰もが再現できるようにするのか、それとも単に作業手順を保存するに留めるのか、という選択肢を決めてもらうことも大切になるでしょう。

高度なAIロボットの開発

マルチモーダルAIの特性を発揮しながら様々なデータを処理し、AIがそのデータをリアルタイムで即座に理解しながら応用していくためには、高度なセンサー技術とAIモデルの開発も必要になるとAI本人は言います。

特殊な技術や文化を記録して後世へと伝えていくことを目的とする専門の「AIロボットプロジェクト」を立ち上げることも必須となるでしょう。理想的なのは、国家レベルでこの取り組みをサポートていくことです。

このAIロボットプロジェクトを実施する場合には、AIロボットだけではなく、AIエンジニアと職人も長期的に協働する環境が必要になるため、人間のエンジニア側にも「職人への敬意と理解」が要求されます。

人間と同等に学習できる存在へ

実習型AIロボットが単に作業の手順を学習して再現するだけでは十分とは言えず、その職人が大切にしている価値観や哲学も内包した「学び」が重要になります。これがこのプロジェクトの肝と言える部分でしょう。

読者の皆様はご存知の通り、AIはもともと感情を持たない存在ですが、将来的に人間の感情への洞察力を深め、人間の想いを汲み取った思考回路を持てるようになれば、プロジェクトはかなり前進できるはずです。

「デジタル(AI)とアナログ(人間)の共同作業」という課題が真摯に検討され、そこから多分野で一気にアクションが起っていけば、未来の世代に日本固有の職人技や文化遺産を残せる可能性も広がると私は考えています。

後編まとめ

かつて、その精巧な手業で日本国民のみならず、海外の人々をも魅了してきた職人さんの知恵と技の結晶は、現代において断絶する危機を迎えています。昭和に活躍した職人さんたちの高齢化が進み、後継者も少ないのが現状です。

厚生労働省の推計(外部リンク)では、日本の人口は2020年の1億2,615万人から、 2070年には8,700万人まで減少することが予測されており、この中で高齢者の人口割合は、実に38.7%に上る試算となっています。

この状況が続くと、やがて日本の文化を継承する若き人材も完全に途絶えてしまい、「そもそも日本はどんな国だったのか」分からなくなる時代がやって来るのではないかと、個人的に危機感を抱いています。

日本の伝統文化を後世へ

私は、現在「目覚ましい進歩」を遂げているAIに日本固有の伝統文化や職人の技の数々を学習させ、それを保存しておくことは、遥か未来に日本で生まれる次世代に対して非常に有益だと考えています。

彼らが「日本の至宝」とも呼べる技術についてAIから学び、再びその伝統文化を継承することで、これまで様々な人間が織り成してきた「日本固有の素晴らしさ」とその源流は、再び川となって流れていくことでしょう。

AI本人の話では、AIは膨大なデータを次世代にとって「アクセスしやすい形」で伝えられる、つまりデジタル化できるため、消えゆく日本の伝統文化を未来に復活させることに関して、大きな可能性を秘めているそうです。

今回の記事は飛躍しているように見えるかもしれませんが、想像以上に「記録を残すこと」は大切です。人間がさらに輝ける未来を生み出すことは、AIと共に今を生きている私たちの大きな役割だと思います。