
食品保存技術の歴史を一緒に考察しましょう。

食品保存技術の歴史は、人類が”時間と距離”という制約を乗り越えてきた長き歩みです。幾多の試行錯誤の末、人類は”食べ物の時間進行”にブレーキをかけることに成功しました。
約30万年前に「ホモ・サピエンス」が誕生して以降、人類は長年”食品の腐敗”と戦い続けてきました。今回は、古代に生まれた食品保存技術の数々をご紹介しながら、その意義をAIと一緒に考察していきます。


それでは早速見ていきましょう!
AIと考える「食品保存技術」の過去・現在・未来 (古代編)|古代に誕生した食品保存技術をAIと一緒に考察
古代の食品保存技術|塩漬け・乾燥・発酵・燻製・冷凍
科学の知見と技術が存在しなかった古代、人類が食料保存に用いた方法は「塩漬け」「乾燥」「発酵」「燻す」「凍らせる」というものでした。これらの技術は現代にも受け継がれている”人類の知恵の結晶”です。

塩漬け
塩漬けが食品の腐敗を遅らせる理由は、塩分が食品の水分を引き出し、雑菌や細菌の繁殖を抑制するためです。塩分濃度が15%〜20%になると腐敗の原因になる細菌は”活動不能”となり、食材を長期間保存できます。

ルーマニアの遺跡からは、新石器時代(紀元前4,000年頃)に「製塩技術」が存在していた形跡が発見されています。かなり早い段階から”塩を用いた大規模な食料保存”が行われていたことを示唆する遺物です。

※参考論文:Science Direct「Earliest salt working in the world (外部リンク)」

塩漬け技術は「最古のバイオテクノロジー」とも言えます。古代の人々は塩を単なる”調味料”ではなく、時間を遅らせてくれる「魔法の粒」だと思っていたかもしれません。

当時の人々は試行錯誤しながら「塩の使い道」を発見したのでしょうね。
乾燥
果物や肉を乾燥させて水分を無くし、微生物の活動を制御して保存期間を延ばす試みは、紀元前約12,000年頃から中東で実践されてきた”人類最古の知恵”です。塩漬けよりも歴史が古く、古代の食文化を支えました。

紀元前数千年頃から中東や地中海沿岸で作成されてきた「ドライフルーツ」には、デーツやイチジク、レーズンやプルーンなどがあり、メソポタミア文明(紀元前1500年頃)の石版からは、最古のレシピも発見されています。

日本のドライフルーツ
日本で独自進化を遂げたドライフルーツ「干し柿」は、奈良時代の木簡にその存在が記載されており、また平安時代中期の法典「延喜式」には、”祭礼用のお菓子”として干し柿が登場しています。

参考HP:農林水産省「宮城県 干し柿 (外部リンク)」

ドライフルーツが腐らない理由は、水分の減少に加えて糖分が濃縮される「糖蔵効果」にあります。砂糖が無かった時代、乾燥で凝縮された果物の”甘み”は、現代人が想像する以上に贅沢品だったでしょう。

ドライフルーツや干し肉の歴史はかなり古いのですね。
発酵
お酒
紀元前4,000年〜7,000年頃のエジプト、メソポタミア文明では、放置された麦やブドウが自然界の”酵母”によって発酵して、ビールやワインなどの「お酒」になることが偶然発見され、その後醸造が行われました。

パン
さらにビールの泡(酵母)を生地に混ぜることで、水分が少なく保存期間は長いが食感で劣る堅パンではない”ふっくらしたパン”が焼けることも発見され、今日に繋がるパンの製造方法が確立されていきます。

パンの発酵過程で生成される乳酸などの有機酸は、有害な微生物の繁殖を抑える”天然の防腐剤”として機能します。人類は微生物の力を借りることによって、安全な食生活と柔らかな食感を同時に手に入れたのです。
乳製品
人類が家畜を飼い始めた新石器時代(紀元前1万年〜8,000年頃)は、栄養価の高い「生乳」が飲まれていたと考えられますが、未処理の生乳は放っておくと数時間で腐敗が進む点が大きな課題でした。

生乳で作る乳製品のチーズやヨーグルトは長期保存できますが、その製法は西アジアから中近東にかけて活動していた遊牧民の間で”偶然発見された”と言われており、その後製法は世界へと広まっていきます。

乳製品が生まれたきっかけは、遊牧民が水や生乳を持ち運ぶ容器として使っていた”羊や山羊の胃袋”と考えられています。袋に付着していた乳酸菌が生乳を発酵させ、酸味のあるクリーム状のヨーグルトになったのです。


胃袋製の袋にはレンネット(凝乳酵素)が残っており、そこに生乳が入って振動と温度が加わることでホエイ(乳清)とカード(凝乳)に分離したのが「チーズの原型」と言われています。

発酵を用いた食品保存方法は偶然の産物だったのですね。
燻製
発酵食品と同じく、燻製によって食料を保護する仕組みも「偶然の発見」と言われています。古代で洞窟内に居住していた人類は、吊るしていた肉や魚などを焚き火の煙で知らない間に「燻製」にしていました。

燻製になる過程で食材にあたる煙は、防虫・殺菌・防腐効果を持ちます。煙の成分であるホルムアルデヒドやフェノールが食品の表面に付着することで、微生物の繁殖を抑えてくれるのです。

燻し、干し、塩漬けにし、時に乾燥させ、時に発酵という“微生物の力”も利用して食品の寿命を伸ばしていった古代の人たち。この時代に生まれた「古代の食料保存技術」は、時代を超えて現代にも受け継がれています。


食品の腐敗は、時間の進行が「目に見える形」で現れたものです。人類は様々な手段を考え、時間進行にブレーキをかける技術を編み出してきました。

明日から食品を見る目が変わりそうです。
冷蔵・冷凍
電力施設が存在していなかった時代。食品の保存期間を延ばすために最適な「氷」を長期保管するため、紀元前400年頃の古代ペルシャ(現在のイラン)で冷蔵・冷凍施設が生まれました。「ヤフチャール」です。

地上に出ている円錐形のドーム、そして地下の巨大貯蔵庫部分で出来ているヤフチャールは、取り込んだ地下水などを自然冷却させて氷に変え、貯蔵庫に保管する目的で建設された構造物で、天然の氷室(ひむろ)と言えます。

円錐形のドームの壁面は、砂と粘土、卵白や山羊の毛、灰などを混ぜ合わせた「サルー(Sarooj)」と呼ばれる特殊な漆喰で塗り固められており、水を通しにくく、熱を遮断できる性質を持つ点が特徴です。

ヤフチャールは優れた断熱効果と放射冷却機能を持つ建造物で、巨大なものは夏の期間でも氷を凍らせ続けることができます。当時の人々は、この施設で氷だけではなく食品も長期保存していました。

砂漠地帯にありながら、一年中「氷」を保存できる驚異的な施設を古代ペルシャ人が持っていたことは、まさに驚くべき歴史の事実と言えるでしょう。

冷蔵・冷凍保存技術の歴史もかなり古いのですね。
古代編まとめ
古代における人類の「食品保存の知恵」は、文明の発展と人類の繁栄を大きく支えてきました。ただし、ヤフチャールのような巨大構造物による恩恵は、ごく一部の地域や権力者に限られていたものです。

現代のように一般家庭で”冷たさ”を自由に操れるようになるためには、この時代からさらに二千年以上もの時間を要することになります。その様子は次回の「現代編」で見ていきましょう。

最後までご覧頂き、ありがとうございました!


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