
未来に向けたリサイクルの取り組みを一緒に見ていきましょう。

未来へ向けたリサイクル活動は、高度な知性と技術の結晶によって実現します。人類は過去に処理不可能だった廃棄物を”高度に管理する時代”に突入しているのです。
現代編では、近代から現代にかけて失われかけたリサイクル文化と、その復権について見てきました。未来編となる今回は、「未来に繋がるリサイクル」を行う各国の事例と、AIを活用したリサイクルをご紹介していきます。


それでは早速見ていきましょう!
AIと考える「リサイクル」の過去・現在・未来 (未来編)|未来へ向けた世界各国の取り組みとAI活用事例を考察
PC・スマートフォンのリサイクル
アメリカ|リサイクル素材の活用
PC・スマホ、タブレットを製造販売するアメリカのAppleやマイクロソフトなどの大手テック企業は、近年自社製品のパーツや包装材を積極的に”リサイクル素材”に置き換える動きを見せています。

現在Appleは年間120万台のiPhoneを分解できる機械”Daisy(外部リンク)”でリサイクル素材を回収しており、マイクロソフトは自社製品Surfaceで”リサイクルされたアルミニウム合金やコバルト”を活用中です。

今は多くのテック企業が製品梱包材から”使い捨てプラスチック”を排除しています。また技術力の発展に伴い、複雑な部品構成を持つ使用済み製品から”任意のリサイクル素材”を抽出することも可能になりました。

新製品へのリサイクル素材導入事例は、環境負荷を抑える「カーボンニュートラル」や「脱炭素」の取り組みにも繋がります。かつて大量消費でリサイクルの輪を断ち切った人類が”高度な技術力”で目指す新たな挑戦です。


製品の素材となるコバルトやリチウム、タングステンやレアアースなどは、採掘に環境破壊が伴います。過去製品のリサイクルは、毎年新製品が生まれるテック業界にとって理に適った手法です。

最先端のデジタル製品にもリサイクル素材が活用されているのですね。
廃水のリサイクル
シンガポール|再生水「NEWater」
2002年、シンガポール政府は生活排水や産業排水を高品質な再生水「NEWater」へリサイクルする取り組みを発表しました。1990年代から各国が目指していた”水再生技術”を研究チームが具現化した形です。

「NEWater」の処理工程は3段階です。最初に”膜バイオリアクター技術”を採用した精密濾過が行われ、次に”逆浸透”で細菌等の汚染物質を排除し、最後に”紫外線消毒”で細菌やウイルスの痕跡を完全に除去します。

リサイクルされたNEWaterは、ウェハー製造工場や工業団地、商業ビルにおける産業用・空調用冷却水として使用されており、また貯水池で希釈し、その後浄水場を経由する”一般家庭向けの水道水”としても提供されています。

重要な「国家戦略」として水のリサイクルへ積極的に取り組んだシンガポールは、下水を生活用水などに循環させる際に生じる国民の”心理的なハードル”にも配慮して、見事に水再生技術の普及を達成しました。


水不足に悩まされる国家にとって理想的な解決策ですが、高度な水再生には膨大な電力が必要で、これが結果的に”二酸化炭素排出”とのトレードオフになるという課題もあります。

技術力を高めれば、理想的な水の循環構造が出来上がりそうですね。
アメリカ|地下水浄水システム「GWRS」
カリフォルニア州オレンジ郡の地下水源を管理する公的機関「オレンジ郡水道局(OCWD:外部リンク)」は、衛生局と連携した世界最大の地下水浄水システム「GWRS(Groundwater Replenishment System)」を稼働中です。

GWRSは、これまで太平洋に排出されていた高度処理済みの廃水を、マイクロろ過・逆浸透・紫外線照射という3段階の処理で浄化するシステムで、州と連邦の飲料水基準を満たす「高品質な水」が生成されます。

1日に1億3,000万ガロン(約4億9,200万リットル)生成されるGWRSの高度な処理水は”塩害対策”に用いられるほか、浸透地にも注入されて、自然に濾過されながら”地域の飲料水”としても供給されています。

シンガポールのNEWaterとアメリカのGWRSは、共に1970年代に構想が生まれた水再生システムです。当時の技術力では実現不可能でしたが、技術力の進化に伴って実用化と運用に成功しました。

かつて「捨てるしかなかった水」を最新科学で「命を支え、大地を守る水」へと変える。これこそ現代におけるリサイクルの真髄と言えるでしょう。

科学力の発展が「廃水の新たな使い道」を生み出しましたね。
雨水のリサイクル
シンガポール|貯水池の活用
シンガポールは現在、国土の3分の2に降る雨を河川・運河・排水路のネットワークを通じて17か所の貯水池に集めています。都市部の雨水を大規模に収集して飲料向けに処理・提供する”世界でも数少ない国”の一つです。

政府の”持続可能性・環境省”傘下にある法定機関PUBは、雨水を貯めている貯水池の水質調査と検査を定期的に実施しており、ウイルス発生の根源となり得る外来種の持ち込みに対して厳しい監視の目を向けています。


技術力の進化は、“何を資源とみなすか”という世間の認識そのものを変え始めていると思います。適切に管理・貯蔵できれば「雨水」も貴重な水資源なのです。

シンガポール政府には「水の再生に向けた強い意思と姿勢」を感じます。
日本|貯留池の活用とNPOの活躍
広島県のマツダスタジアム地下にある雨水貯留池(貯留量15,000㎥)は、雨水をグラウンドの散水や”せせらぎ水路”などに再利用しており、JR広島駅周辺地域(約52ヘクタール)の浸水解消にも貢献しています。

また墨田区に拠点を構えるNPO法人「雨水市民の会」は、雨水活用の啓蒙活動のほか、手作り貯留タンクのワークショップ等を開催し、”小規模分散型雨水管理”の概念を地域の人々へ浸透させています。


日本はこれまで「治水」を主眼に据えた都市整備を行ってきましたが、現在は雨水を”資源”として捉える「利水」の発想も徐々に広まってきています。

まとまった雨が降る日本でも雨水は資源になりそうですね。
ドイツ|RWH(雨水利用)システム
ドイツでは1970〜1975年頃に「雨水利用システム(RWH)」の概念が芽生えました。今は毎年約75,000個の雨水貯留システムが設置され、新築住宅の多くでシステムの導入が進んでいます。

ブレーメン州は雨水貯留システム設置費用の3分の1を補助。ザールラント州とシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州も補助金を出しています。利用者はシステム設置を水道局へ報告するだけで良く、許可申請は不要です。

Springer Nature(外部リンク)が公開中の論文には、「ドイツは雨水利用システムの研究・活用において先駆的な国」との記載があります。世界的に見ても”早くから雨水リサイクルに取り組んできた国家”と言えるでしょう。
フランクフルト空港の雨水活用
フランクフルト空港には、1990年代から”ドイツ最大の雨水利用システム”が存在しています。主に空港の屋根から雨水を集める仕組みで、集積した雨水をトイレの洗浄水や植物への水やり、空調システムの洗浄などに活用中です。

新ターミナル3は”分散型で自然に近い雨水管理方式”を採用しており、毎秒500リットルの処理能力を持つフィルターレスの洗浄システム「ACO Oleosmar(外部リンク)」が雨水の浄化に役立っています。


ドイツは”環境政策ありきの都市設計”を目指しています。都市部の排水問題解決と雨水活用を同時に行う都市設計思想を最も早く社会へ浸透させた国家です。

環境先進国らしい素晴らしい取り組みですね。
AIを活用したリサイクル事例
アメリカ企業「AMP Robotics(外部リンク)」は現在、リサイクル工場内におけるゴミの仕分けをAIが担う自動システムを提供中で、このAI管理システムはリサイクル対象物の90%以上を自動回収できます。

AMPが提供する独自AIは数十億個に及ぶ物の種類を学習しており、遠隔のアップデートで新製品の形状や情報も記憶できます。近赤外線センサーも用いてゴミを瞬時に判別していく頼もしい存在です。

コンベア上を流れるゴミをAIがカメラ映像で分析・判定してリサイクル品を自動選別していく同システムは、「人間の目視」では限界があった選別作業の精度を高め、より高速化する点で価値があります。


リサイクルの最大の障壁は”集めること”ではなく”分けること”にありました。AIはこの課題に対し、人間の判断力を代替する役割を担うことができます。

AIと人間はリサイクル分野でも協業できますね。
未来編まとめ
先史時代から近代に至るまで、物はその命が尽きるまで形を変えて循環していました。そして現代へ突入した今、大量消費時代によって途切れかけた「循環の輪」は、未来へ向けて着実に繋がれ始めています。

現在、発生した”二酸化炭素”を回収し、リサイクルまたは貯留する技術”CCUS”の研究と実験が世界レベルで行われています。未来ではカーボンニュートラルと共に「炭素資源の活用」が実現しているかもしれません。

”資源を使い尽くす時代”から”資源の流れを再設計する時代”へと変貌を遂げつつある今、限りある資源をリサイクルしながら「高度な循環の輪」を未来へ繋ぐことは、人類に与えられた使命だと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました!


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