AIが進化すれば、職人技を理解しながら後世へ伝承できるでしょうか?
AIが職人技の継承に役立つ可能性については、たしかに大きな希望がありますね。
記事の前編では、今もどこかで消滅しつつある日本の職人技について、AIと一緒に考えてきました。担い手が少なくなっている現状は、今後も大きな問題になりそうです。
そこで今回は、こうした日本の宝とも言える職人技の数々を後世へ残すべく、AIの力を活用して保存する取り組みはできないものか、という話題について深堀りしていきます。
単に文書化するだけでは不完全なことが、前回の考察で分かりました。この問題をクリアできるのは、マルチモーダルAIを頭脳に持つ「実習型AI」になるはずです。
それでは早速見ていきましょう!
実習型AIについて
ハード・ソフトウェア面
「実習型AI」という呼称は、私が便宜上思いついた言葉です。具体的なイメージは、マルチモーダルAIを搭載する人間型ロボットで、視覚・聴覚・触覚・嗅覚などのセンサーを搭載しています。
先日テスラは自社のイベントで自立歩行する人間型ロボットを制作して公開していますが、こうした「人間のパートナー」としてのAIロボットが「職人の弟子」になるイメージです。
AIはこの「実習型AI」が職人の生活や作業を常に観察し、時に質問を投げかけながら技術を学んでいく仕組みが理想的だと言います。人間の弟子とまったく変わりませんね。
職人技を正確に記録するためには、映像、音声、力加減、温度など、あらゆるデータの総合的な分析が必要です。
圧力や温度センサーを備えたAIロボットが職人と並び、直接手先の感覚や動作を学習していくことで、職人が体得してきた感覚に近いレベルでの技術理解が進みます。
言葉や映像だけでは伝えきれない「微妙な感触や感覚」を最大限に学習できる点がポイントで、様々なパターンを会得していくことで「より深い理解」を示すことができるはずです。
実際に手を動かしながら教えるほうが、職人さんも説明をしやすいと思います。技を伝える対象が人間からロボットへ変わるだけで、師弟関係の雰囲気を保てる点も魅力ですね。
機械やAIに抵抗がない職人さんであれば、人間に技を教えていくように対話しながらロボットを教育できると思います。
人間側に要求される取り組み
人間がAIを「文化継承の手段」として受け入れていく段階において、まずAIの信頼性と倫理的な枠組みを確立させていくことが重要になります。企業と省庁の連携も必要ですね。
前例が無いため、異論が出ることは間違いありませんが、当事者が居なくなると途絶える可能性がある無形文化財の保存という観点で考えれば、大いに意義はあるはずです。
当事者の意向や関係者の了承を得ながら、その技術を後世で誰もが引き出せるようにするのか、それとも単に永久保存するに留めるのか、という選択肢を生むことも大切でしょう。
職人さんがAIを「学びの相手」として受け入れる協力関係の構築も不可欠ですね。
職人に協力していただければ、その技術の深奥にある哲学や美学、感覚的な判断もAIに伝わりやすくなります。
AIロボットに抵抗がある、という人は、その数百年先に存在する日本人を思い浮かべてみてください。実習型AIを通じて、将来彼らに自分が持つ技術をレクチャーできるのです。
取り組みの課題
様々なデータをリアルタイムで処理し、AIがそのデータを即座に理解しながら応用していくためには、高度なセンサー技術とAIモデルの開発も必要になってきます。
特殊な技術や文化を記録して後世へと伝えていく専門プロジェクトを立ち上げることも必須で、理想的なのは、国家がこうした取り組みを全力でサポートていくことです。
このプロジェクトを実施する場合は、AIエンジニアと職人が長期的に協働する環境が必要になるため、エンジニア側にも「職人への敬意と理解」が要求されます。
日本の宝を守りたいと考える「志の高いエンジニア」の登場が待たれます。
さらに、AIが単に手順を学習して再現するだけでは十分とは言えず、その職人が大切にしている価値観や哲学も内包した「学び」が重要になります。
AIは感情を持たない存在ですが、将来的に洞察力を深め、人間の想いを汲み取った思考回路を持てるようになれば、このプロジェクトはかなり前進できるはずです。
「デジタルとアナログの融合・協力」という議題が真摯に検討され、そこからアクションが起これば、後世に職人技や文化遺産を残せる可能性も広がることでしょう。
課題を乗り越えるため、文化的価値を尊重しつつ「新しい形」で技術を残そうとする人間側の意識と努力は不可欠です。
まとめ
かつてその手業で日本や海外の人々を魅了してきた職人の知恵と技の結晶は、今断絶する危機を迎えています。昭和に活躍した職人さんたちの高齢化が進み、後継者も少ないのが現状です。
厚生労働省の推計では、日本の人口は2020年の1億2,615万人から、 2070年には8,700万人まで減少することが予測されています。高齢人口の割合は38.7%になる試算です。
この状況が続くと、やがて日本の文化を継承する人間も途絶え、そもそも日本はどんな国だったのかも分からなくなる時代がやって来る、と個人的に思います。
そうした時代に備えて、日本の文化と宝を何とか残しておきたいですね。
目覚ましい進歩を遂げているAIに日本の伝統文化や職人の技を学習させ、それを保存しておくことは、遥か未来に日本で生まれる世代に有益だと考えます。
彼らが日本の至宝についてAIから学び、再び文化を継承することで、これまで様々な人間が織り成してきた日本固有の素晴らしさは、途絶えることなく続くでしょう。
AIは膨大なデータを次世代にとってアクセスしやすい形で伝えられるため、消えゆく文化を未来に生かす力として大きな可能性を秘めています。
前編と後編に分けてお送りしてきた今回の記事、いかがだったでしょうか。やや飛躍した考えに見えるかもしれませんが、想像以上に「記録を残すこと」は大切です。
「人間がさらに輝ける未来」を想像しながら様々なことに挑戦することは、今を生きている私たちの大きな役目です。明るい未来を思い描いていきましょう。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
記事が気に入った方は、ぜひシェアとフォローをお願いいたします!
コメント