これは私の憶測になりますが、AIとの共同作業を明かさずにゲーム開発を行っている企業は世界に複数あるような気がします。
その憶測はかなり的を射ていると思います。実際、多くのゲーム開発企業が、AI技術を活用してゲーム開発を行っていますが、AIの具体的な利用方法や程度についてはあまり詳細を公にしていないケースが多いようです。
前編では、AIをゲーム開発に組み込んだ際、人間キャラクターがどのような進化を遂げるのか、という未来を見ていきました。
後編となる今回は、実際にAIをゲーム開発に組み込んでいる企業の実例を挙げると共に、なぜAIとの共同作業があまり公にならないのか、という点についても考察していきます。
それでは早速見ていきましょう!
実際にゲーム開発にAIを組み込んだ事例
AIをゲーム開発へ取り入れることによって、人間キャラクターのリアリティーを大幅に向上させることに成功した企業があります。AIが代表例として挙げたのは以下の2社です。
ロックスター・ゲームス
『グランド・セフト・オート』シリーズで知られるアメリカの人気ゲーム企業「Rockstar Games (ロックスター・ゲームス)」は、AIを開発に取り入れたことを公表しています。
2018年にリリースされたオープンワールド型クライムアクションRPG『レッド・デッド・リデンプション2』では、17年ぶりにAIシステムが見直されています。
NPCのリアクションや行動が非常にリアルですが、その背後にAI技術が使われていることは一般的にあまり語られていません。
ファクトチェックを行ったところ、2018年にGQアメリカ版が創設メンバーの1人であるダン・ハウザー氏へ行ったインタビューでAIへの言及を見つけました。
ゲームは発売当時に購入してやり込みましたが、NPCが主人公アーサーに対してリアルな反応を返してくる点に驚きました。
リアルなオープンワールドゲームで世界的な支持を獲得している同社にとって、より進化した世界を提示するためには、AIの見直しと活用が必須だったのでしょう。
その甲斐もあって、同作は非常に素晴らしい「人間味溢れた」オープンワールドを実現しています。
ノーティードッグ
同じくアメリカに拠点を構えるゲーム開発会社「Naughty Dog (ノーティードッグ)」は、『The Last of Us』シリーズや『アンチャーテッド』で知られる企業です。
2020年に発売されたシリーズ第2弾『The Last of Us Part II』では、主人公と対峙する敵キャラクターのAIが進化を遂げています。
敵はプレイヤーの動きに反応し、カバーに隠れる、チームで連携するなど、動的な行動を見せます。
このAI敵キャラクターの進化は、同作のライター兼ディレクターであるニール・ドラックマン氏が、ゲーム紹介媒体「ファミ通」に受けたインタビューで語っています。
実際、敵キャラクターがより狡猾な動きをするようになったことは、ゲーム紹介媒体各社のプレイレポートでも多数取り上げられており、AI進化の好事例と言えます。
リアルなグラフィックだけではなく、NPCの頭脳が大幅に進化していることで話題を振りまいた作品ですね。
なぜAIとの共同作業が明かされないのか?
上記はインタビュー記事で開発に携わったメンバーが自ら明かした実例ですが、AIをどの程度までゲーム開発に関与させているかの詳細は不明なままです。
多くの企業がAIをゲーム開発に利用しているのは事実ですが、その詳細を明かさない理由には、さまざまな戦略的な事情があると考えられます。
競争上の優位性
ゲーム業界は非常に競争が激しいため、AIをどのように活用しているかを公表することで、自社の開発ノウハウが他社に知られてしまうリスクがあります。
他にはない画期的なAI開発システムを実現した場合、安易にデータを公開しないのは当然と言えます。実際AAAゲームの多くは機密事項だらけです。
技術の理解度
AIの導入によるメリットや効果を説明することが難しく、また誤解を招く恐れがあるため、企業があえて詳細を明かさない場合があります。
モーション制御のみならず、もっと複合的な形でAIがゲーム開発に用いられている場合、開発の流れを順序立てて行うことは困難を極めそうです。
プレイヤーの反応やイメージ
AIに対して不信感や抵抗感を持つプレイヤーも存在するため、企業はそれを避けるためにAIの存在を前面に出さないことがあるでしょう。
「ゲーム開発にAIを使いました」ということを全面的にアピールしていくと、キャラクターの自動生成など、あらぬ疑いをかけられる可能性も出てくるはずです。
AIとの共同作業が世間一般に浸透するまでは、誤解を招かない程度に公表していくのが正解なのかもしれませんね。
ゲーム開発とAIの今後
前編と後編に分けてお送りした今回の記事は、AIが実現するキャラクターモーションの進化と未来、そして開発にAIが携わる未来を見てきました。
すでに世界の有名企業がAIを開発に取り入れており、特にキャラクター制御の部分で一定以上の効果を出していることもおわかりいただけたと思います。
AIは今後、ゲーム開発プロセスの効率化や、プレイヤーによりリアルな体験を提供するためにますます重要な役割を果たすと考えられます。
ただその一方で、ゲームらしい挙動を持つキャラクターを生み出すことに長けている開発者が存在し続けることも必要で、彼らが持つ職人技が失われてはなりません。
個人的には、より人間らしいモーションを実現するため、そして「モブ」と呼ばれる群衆の制御でAIの本領が発揮されると思います。
数年後には、それまでになかったクオリティーを持つ人間キャラクターが、ゲーム内で生き生きと動き回る姿を見ることになるかもしれませんね。
次回はAIが生み出すゲームの「自動生成コンテンツ」について取り上げていきます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
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